マンション価格高騰で広がる「AI自動査定」のカラクリ

大都市圏の中古マンション価格が高騰の中、広がっているのが「ネット査定」だ。業者にとっては営業で回ったり、チラシを配るより労力、コストが削減できる。一方、査定を依頼する諸費者側もお手軽とwin-winだという。そんなネット査定のカラクリとは。

内外不動産価値研究会2023/09/05

マンション価格高騰で広がる「AI自動査定」のカラクリ
  • 24時間休まない検索エンジンがネットを動き回り情報収集
  • レインズのデータ、使用不可で精度は落ちる
  • 集められるのは過去データだけ、最後は営業マンの感と読み

チラシよりも反響のある「AI自動査定」

東京、大阪、福岡……といった大都市圏の不動産は好調だ。そのせいもあってかこうしたところに住む人が、新築、中古を問わずマンションや戸建ての検索した人であれば、PCやスマホで「こんなに高くうれるの!?」といったキャッチコピーに「スマホで楽々 無料&査定」「1分であなたのマンションのお値段を査定!」などといった広告、メールマガジンを受け取ったことはないだろうか。
これがいわば「AI自動査定」というものだ。

売却する気はなくても「自分の家は今、いくらで売れるんだ?」という思いは多かれ少なかれ誰もが思うものだ。とくに中古マンションの人気が高く、価格も高騰していると言われればなおのこと。AI自動査定なら住所や携帯電話、メールアドレスは登録しなくてはならないが、そのあとはダイレクトメール広告が来る程度のもの。興味本位で気軽に査定ができるのがウリらしい。

 一方、業者にとってはネット広告やメールによる販促は、チラシを配る労力やコストより安く、思った以上に反響も期待できるという。

マンション情報はロボット検索エンジンで集める

ある不動産会社AI査定のネット広告

都内の湾岸地域のタワマンに住む会社員は、最近、AI査定を登録した不動産業者から自宅の査定価格が1年前に比べ数百万円も上がったことを知らせるメールが届き、ホクホク顔だ。
「今、売ろうとは思わないが、査定が上がる分には悪くない。いやその日だけは気分がいい」と彼は話す。彼の住む東京湾岸エリアの中古マンションは新築に比べて値ごろ感のある中古マンションも「タマ(物件)不足」のため、呼び込んだ顧客にメールやサイトを通じて、高めの物件値段を弾き、顧客誘導に使っているという面がある。

不動産価格の自動査定は、AIを活用し電子的に休みなくインターネット空間に広がる膨大なデータの中から、マンション関連を自動的に選び、物件の情報を集めながら新しいデータを蓄積していく。
要は不動産関連サイトを自動的に回ってデータを拾うクローリング(Webページの情報を収集する)を行い、過去の取引データや類似物件の情報を大量に蓄積しているのである。これを一部業者は「当社の誇るビッグデータ」などと宣伝しているというわけだ。

集める基本的なデータは、マンションの住所、間取り、専有面積、築年数など。そして、売り出し価格を収集する。これにエリアごとの新築・中古の価格動向や人気などの項目を加味してデータを補足する。加えて、階数、駅までの距離、周辺施設などで補正項目を増やせば、誤差も小さくできるという。

そもそもマンションは戸建て住宅に比べて、同じ物件では坪単価で価格差がつきにくく、査定幅は大量生産の工業製品に近い。中でも大規模な物件や取引の多い物件の価格査定は楽だ。
「ある意味、AIがセールスマンなので営業職員の力量や意欲と言った差が付きません」
 などと言う業者もいる。とはいえ、AIの“力量”は学習に十分な量の正確なデータが必要で、データが少なければ正しい査定ができない。言い換えればAIの力量というより、多くのデータを集めるシステム構築にどの程度の投資できるか、事業者の資金力でその差が出ると言えるだろう。

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都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナル集団。主に東京の不動産についてフィールドワークを重ねているが、再開発事業については全国各地の動きをウォッチしている。さらにアジア・欧米の状況についても明るいメンバーも参画している。

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