【倒産不可避?】街の不動産店が次々と消滅、その背景にあるもの

いまや全国にあるのコンビニエンスストアの倍以上の数がある不動産業者。そんな不動産業者に倒産が増えている。不動産価格が高騰しているなかで不動産業者に何が起こっているのか。

立川昭吾2024/09/06

【倒産不可避?】街の不動産店が次々と消滅、その背景にあるもの
  • コロナ前の2割減、年間賃貸件数2万3000件で3万を大幅に割り厳しい状況に
  • オリジナルのスマホアプリで、大手と中小の格差はひろがるばかり
  • 全産業のなかで、経営者の平均年齢がダントツにたかい不動産事業者

前年比70%増 街の不動店の倒産

不動産関連企業は、産業になかでも数の多い産業の1つです。都市圏でもだいたいの駅前には1、2軒は必ず不動産屋さんがあり、いまもそれはあまり変わりないようです。

これまでアパートやマンションなど賃貸物件案内のピークは2~4月ぐらいで、これはちょっとした風物詩みたいなものでした。しかし、最近になってこの「ピーク時」というのが、見えなくなってきています。
こうした背景を踏まえ、不動産業界が今後、どうなるかを考えてきたいと思います。

結論からいってしまうと、いま、街の不動産店の倒産が非常に増えてます。

具体的には、帝国データバンクが発表した2023年の賃貸マンション・アパートの仲介・管理を手掛ける「街の不動産屋さん」の倒産件数は120件、前年比で70%増加しています。

2023年3月31日現在の宅地建物取引業者と宅地建物取引士の数は、2022年に比べ宅建業者は1125業者増えています。ただ、これは宅建免許更新者数も含まれているので、この中には更新しない業者もいて、21年と比べた業者数はマイナスになっています。

こうした不動産業者の倒産も含めた廃業が増える大きな理由は、不動産業者の多くが、駅前不動産のような小さい業者が多いということが要因の1つになっています。

この理由は、人口減ということも大きな理由
になりますが、むしろ、物件の紹介、案内の方法が変わってきたということがあります。

賃貸契約件数が減少している理由

2023年3月の東京都内の賃貸契約件数は、2万3000件で、業界では3万を切ったら厳しいといわれおり 、この数字はコロナ前の8割ぐらいまで落ち込んでいます。
背景には、やはり在宅勤務が増えたことがあります。このため企業の人事異動にともなう転勤が減っています。また、大学進学も地方から東京や大阪といった大都市圏の大学への進学が少なくなって、地元の学校に進学する人が増えています。
こういったことから賃貸住宅に居住する独身者や学生の入居者が減ったことが大きなの 原因なのです。

それ以外の要因として見逃せないのが、引っ越し費用の高騰があります。

たとえば、福岡から東京への引っ越し費用は単身者で10万円以上、2人世帯では20万円から25万円というのが相場です。
また、同じ都府県内、いま住んでいる近所で便利なところや、広い部屋に引っ越すといった近距離引っ越しも以前はよくありましたが、これも引っ越し代の高騰や、引っ越し業者とのスケジュールが合わないなど、以前のように簡単に引っ越しができなくっているため、見送るというケースも増えています。

背景には個人所得が上がらない一方で、家賃がじわじわと上がっているため、いま住んでいるところでがまんするということもあるようです。
結果、小規模の不動産業者を訪れる人が減ってしまったわけです。

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この記事を書いた人

立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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