【破綻 介護事業】超高齢時代に過去最多600件あまりが事業撤退

超高齢社会の日本。そんななかにあって介護施設の破綻が増えているという。その背景に潜むものとは何だったのか。

立川昭吾2024/08/19

【破綻 介護事業】超高齢時代に過去最多600件あまりが事業撤退
  • 介護施設の破綻が始まったのは団塊世代が高齢期に入った2016年からだった
  • 大手企業が高齢施設のM&Aを始めて、倒産が一気に急増
  • 見分けるポイントはベッド数と施設の評判

厳しさがはじまったのは2016年から

日本の総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合の推移は、1950年(4.9%)から上昇が続き、85年に10%、2005年に20%を超え、23年には3624万人となり、全人口に占める割合は29%と過去最高を記録しています。
一方で少子化も同時進行しているため、2065年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になることが予想されています。

こうした中でなくてならものが介護福祉事業です。高齢者が増え続けていることから、需要は減らないだろうと思われていると思います。しかし、実態は介護事業関連の分野での倒産が増加しています。
前からいわれていることですが、日本の介護事業者は本当に厳しい経営環境に置かれています。

介護事業関連を大きく分けるとすると、自宅にいながら訪問介護や通所介護(デイザービス)を行う「居宅介護」と施設に入所するいわゆる老人ホームの「施設サービス」の2つになります。さらに介護内容によってサービス内容が細分化されており、こうした介護サービスによって、今の日本の高齢社会が支えられています。

ところがこの介護事業関連は、2016年あたりから年々厳しくなる経営を続けていました。そして、ついに2022年に143件が破綻しました。
商工リサーチによると、2023年の「老人福祉・介護事業」の倒産は122件と減少していますが、倒産にはあたりませんが、休廃業・解散が510件と、この数字を合わせると632件と過去最多の介護事業者が何らかのかたちで、事業撤退しています。2024年もこの状況は変わりそうもなく、高齢者が多くいるから介護事業は安泰ではなく、まさに淘汰される時代になってきています。

1 2 3 4 5

この記事を書いた人

立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

  • WEB

※このサイトは「事業再構築補助金」を活用しています