【倒産急増 貨物運送】求められる事業基盤の変化、その先にあるもの

4月、貨物運送業界にとっての2024年問題の幕がついに上がった。慢性的なドライバー不足のうえに、働き方改革によるドライバーの勤務時間の厳密な管理。こうした状況でなかで貨物運送会社が生き残るために必要なこととは何か。

立川昭吾2024/05/28

【倒産急増 貨物運送】求められる事業基盤の変化、その先にあるもの
  • 2025年までには貨物運送業の事業基盤が多く変化する
  • リーマンショックで淘汰の波を受けなかった貨物運送業界
  • 物流の2024年問題は、業界だけが対応するのではなく、利用者の意識変革も必要

ついに幕が上がった物流の2024年問題

2024年4月、ついに貨物運送業界では2024年問題の幕が上がりました。

貨物運送業界の2024年問題とは、働き方改革関連法に伴い労働基準法が改正され、一般的に時間外労働は、原則月45時間、年間360時間と規定され、大企業は2019年4月、中小企業では2020年4月から施行されました。しかし、貨物運送業界は、業界の特性から法律の適用が年間960時間を上限とし、法律の適用も2024年4月からとされました。その適用がついにはじまったのです。
この改正によって戦後の貨物運送業界の商習慣が大きく変わるのではないかと思います。

東京商工リサーチによれば、貨物運送業の倒産件数は2021年=169件、22年=248件、23年=328件と3年連続で増加しています。また、22年8月には日本ロジステックという大手も倒産し、負債総額は150億円以上になっています。直接の倒産原因は外部への不正支払いですが、貨物運送業界に厳しい波が押し寄せてくることを感じさせられます。

貨物運送業界の2024年問題については、宅配便の配送や長距離トラックによる輸送が厳しくなるということで、4月に入ると、マスコミで取り上げられましたが、中小企業や飲食業界の報道に比べて、危機感のトーンが弱いように感じられます。

しかし、2024年問題の幕が上がったことで、2025年までには、貨物運送業の既存の事業基盤が大きく変化するのではないかと思います。大手では佐川やヤマト、日通といった大規模なものから、町の小さな運送屋さんまで、時代に合った大幅な労働改善が迫られるでしょう。
一方、働く側のドライバーも残業代で稼いでいた人も多くいて、残業が減らされ、収入も減ることから、もっと給料のよいところに転職してしまう人も多く出てくることが予想されます。

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立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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