【倒産急増 木造建築業界】資材高騰、人手不足…三重四重苦の現実

厳しい状況が続く建築・土木業界。そのなかでもひときわ厳しい環境に置かれているのが木造建築業だ。その背景と対策を考える

立川昭吾2024/07/29

【倒産急増 木造建築業界】資材高騰、人手不足…三重四重苦の現実
  • 資材不足に加えてローコストのハウスメーカーの進出でさらに厳しい環境に
  • IT化、DX化が進み親方の勘とどんぶり勘定ではでは対抗ができない現実
  • インボイス制度導入で腕のよい職人がいなくなる

バブルの後遺症から立ち直った矢先で

建設・土木業界で倒産が続出しているなかで、さらに厳しい状況にあるのが「木造建築業界」です。

国内の木造建築の新築着工件数は、年間90万戸ほどあります。このほかにリフォーム工事、改装工事がおよそこの倍の件数が行われていいます。ところがこの木造建築業界に大きな変化が起きています。

木造建築業界、リフォーム業界は2010年ぐらいまでは、順調に売り上げが推移してきており、なんとかバブル崩壊の混乱から落ち着きを取り戻しつつありました。
しかし、2015年ごろから大手ハウスメーカー受注が増えるようになります。これに加えて格安メーカーの参入によって大変な価格競争になっていきます。このころから業界全体を巻き込んだ変革期を迎えることになりました。

この業界の変化は、地方だから、大都市圏だからという地域的な差はほとんどなく、大都市圏のハウスメーカーであっても非常に危ないといわれています。

そこにきて2020年からはじまったコロナ禍で、実質的に工事が停止。さらにコロナの影響でもありますが、2022年ごろに輸入木材が入ってこなくなります。このことはこの木造建築業界にとっては大地震に見舞われたようなもので、コロナ明け早々から木材不足による納期遅れ発生します。
それでも なんとか2023年にこうした問題が解消し始めたかなと思ったら、今度は半導体不足で建築資材以外の温水シャワートイレや給湯器という部材も不足し、価格も高騰し始めました。

コロナによる急激な変化に対応不可

木造建築会社は、最初に見積もりを出して受注するので 、木材や資材が値上がりしたから価格も上げますといえない。それでも交渉をするのだけれど、施主とのトラブルになったりして、結局は自社の利益圧縮なってしまいました。

さらにローコストのハウスメーカーが大都市圏だけでなく地方にも進出してきまて、各地で価格破壊が始まります。これまで通りの見積もり出しても、「テレビでCMをやっているほうが、ぜんぜん安い」といわれ価格を下げざるを得なくなります。そのため各地にいた 、いわゆる名工と言われた人たちも、消えていってしまっています。もはや木造建築業は儲からないビジネスなってしまい、人手不足、後継者不足に拍車がかっているのが、この業界の現在の状況です。

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立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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