1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。
農家の数は20年前から半減
倒産というと、企業、最近ではとくに中小企業の倒産に目が向いてしまいます。しかし、実は日本の農業は非常に厳しい状況に置かれています。
ここではこれからの食糧問題、食糧安全保障の観点から、農業の倒産について見ていきます。
農家の倒産はあまり注視されていないのですが、実はすごく多く、むしろ中小企業よりも農家のほうが減少の流れが早く進んでいるともいえます。
日本の景気は回復傾向にあって一時期、株価も4万1000円を超え、ゼロ金利政策も転換されました。その一方でマスコミでは中小企業の倒産が心配されていますが、その陰で農家が消滅し、壊滅状態にあるということはあまり報道されていません。
アメリカやヨーロッパでは「農業者=経営者」という考えが強く、アメリカの商工会議所などの団体の会頭のようなポジションにある人は、農家出身者が多くいます。
一方、日本では「商・工・農」の「農」が抜けていて、経済について敏感な方でも、農家については商業工業に比べてあまり関心がないようです。この傾向は少し変わってきてはいますが、それでも農業の存在は「商・工」とは違う感覚があるようです。
農家の現状を詳しく見ていくと2023年現在、農家の数は92万9000戸で、20年前から半減しています。今後もこの状況は続き、さらに減少することが予想されています。
また、従事者の年齢を見ていくと、2022年の段階で中小企業の経営者の平均年齢は62~63歳ですが、農家は68.4歳(農水省調べ)です。しかも、中小企業以上に大変なのは、事業承継者が「ほぼいない」という数が非常に多いという点です。