1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。
日本の農家は「老老事業承継」
今の農家は、高齢になった親のあとは、企業などに勤め定年退職した子どもが自分の家を継いで農業をやるというのが典型的な事業承継モデルになっています。この結果、高齢化率をさらに高めています。
また、会社経営のように、家計と(農業)経営がきちんと分離されているところは少ない。
通常の経営で考える時給いくらというような生産効率という発想がありません。このままの状態が続いていくと、農業は高齢者ばかりの老老承継になっています。
こうした状況を見越して10年ほど前から農協を中心にトラクター、田植え機、コンバインといういわゆる農業近代化の“3種の機械”を導入させ、使わせていますが、実態は全然採算が合っていません。
何しろ米ですら買い取り価格が安いため、生産側と買う側の意見がまったく合っていない。私の故郷の新潟もそうですが米を作っていても全然儲からず、食べていけない。そのためどこか外に出て働かなければならないという中途半端な農家が多いのです。
このような中途半端な農業政策を続けていけば、本当に農家が全滅してしまう。農家を守るというだけでなく、もはや農業の倒産は我が国の食料安全保障の観点から考えなくてはなりません。軍事的な防衛だけでなく、食料の確保も、安全保障問題としてとして考える必要があります。
国は米の生産だけに力を入れていますが、それでも2020年で880万トンの生産量が2050年には40%、350万トン減少することがはっきりしています。
そもそも農水大臣が2040年までには米不足が起きるといっているのに、その具体的な対策も見えていないのが現実です。
農業は外での作業で、大変な仕事です。さらに儲からないでは今の若者は誰も農業をやりたと思いません。
人不足、労働者不足に対しては外国人労働者を雇うといっていますが、基本的に農家は小作制度が明治維新からずっと続いているため、都会の土地のように分割することはありません。“田分け=たわけ”という言葉があるように、地方では今も簡単に土地を分けたり、手放すことがなかなかできないのが現実なのです。そのため後継者のいない耕作放棄地増えています。