隅田川沿いタワマン開発から見えてくる京急・東武の不動産開発の思惑

旧ライオン本社跡地で進むタワマン建設――そこから見え隠れする人口減少が進むなかで鉄道会社の不動産開発に力を入れるこれだけの理由。

編集部・山下努2025/02/06

隅田川沿いタワマン開発から見えてくる京急・東武の不動産開発の思惑
  • 京浜急行、東武鉄道、綜合地所という珍しい顔ぶれで動き出した隅田川沿いで進むタワーマンション計画、その物件価格は?
  • 本社移転、ドル箱路線の危機……JRの攻勢を受ける京浜急行の憂鬱
  • 東武鉄道は日光、鬼怒川など北関東へのインバウンド需要を取り込みに力を入れて

ライオンの本社跡地の可能性

神田を起源とする歯磨き粉と歯ブラシの大手メーカーだった「ライオン」が、墨田区本所から隅田川を挟んだ蔵前の日本郵政の開発地「蔵前JPテラス」に移転したのは、2023年のこと。それから2年、隅田川右岸の本所1丁目の旧ライオン本社(約6500㎡)は、丸ごとタワーマンションに再開発される。この「墨田区本所1丁目計画(仮称)」とされる開発は京浜急行電鉄(以下・京急)など、6社の共同開発。珍しい点は、京急が東武鉄道(以下・東武)や長谷工コーポレーションの子会社の総合地所などと組んでいる点だ。

1月中旬にあった近隣住民に対する計画説明によると、建物は、26階建て(91.4m)で464戸。竣工は4年後の2029年4月上旬予定である。
土地の規制は近隣商業地域で建蔽率80%、容積率500%、日影規制なし、建築物の高さ制限は95mなので、ほぼ規制ギリギリの大きい建物が建つ予定だ。
長谷工本体は、マンション建設に特化し、低中層マンションの競争力がある。

完成後の価格は出ていないが、墨田区に06年2月に竣工した錦糸町のの「ブリリアタワー東京」(45階)の33階(80.4㎡)が1.5億円。東武曳舟駅近くにある15年11月に竣工した地上28階建ての「アトラスタワー曳舟」は、1~1.2億(70㎡)。隅田川を越えた都営浅草線蔵前駅近くの「大枝緒タワーレジデンス」(26階)の17階(64.48㎡)が1.45億と中古物件でも1億を超えていることから、新築の中規模のタワマンであれば、1億を超えてくることになるだろう。

建設工事が進む旧ライオン本社跡

もっとも、隅田川右岸には高架の首都高速6号線向島線が走っており、上層階でなければ隅田川を見渡せない。また、高速道路の騒音も懸念される。ただ、周辺は小さいマンションや戸建て、ビルが多く、部屋の向きによっては隅田川花火を自室から見ることも可能だ。
そんな再開発の住民説明会が1月中旬に開かれた。この地域には巨大マンションはなく、いきなりの巨大マンションの出現で自分の家の資産価値が落ちてしまわないかという不安の声も聞かれた。

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