不動産投資――もしものときに失敗しない相続準備のすすめ

不動産は相続税対策として有利な選択肢。不動産投資、マンション投資の強み、相続を円滑に進める方法とは?

齋藤岳志2024/09/27

不動産投資――もしものときに失敗しない相続準備のすすめ
  • 不動産投資の中でも区分マンション投資は相続時の換金、分割しやすい
  • 「自筆証書遺言書保管制度」と「生命保険契約照会制度」は相続を円滑に進める方法

相続税対策に不動産が有利な理由

「不動産と相続」というと、「相続税」にスポットをあてられることが多くなります。

現預金や株式、投資信託などの、いわゆる金融資産を保有している場合。
現預金は、持っている金額そのものが相続税評価額になり、株式や投資信託に関しても、市場の取引価格から、評価額が出されます。
そのため相続の対象になる価格も、いくつかの選択肢はありますが、相続税評価額を下げるような対策を打つことは基本的に難しいのが現状です。

一方で不動産に関しては、自宅であれ、賃貸用の物件であれ、相続税評価額という点では、各種の節税措置が施されています。
たとえば、自宅であれば、要件はありますが、対象になれば「小規模宅地の評価減」などがあります。賃貸用の物件でも「貸宅地」「貸家建付地」などで、相続税評価額が下がるケースがあります。
また、土地に関しては取引価格ではなく「路線価」、建物(家屋)に関しては「固定資産税評価額」が、相続税評価額のベースになってきます。

一般論になりますが、「路線価は時価の80%」「固定資産税評価額は時価の70%」くらいの評価になるといわれています。この点だけを考えても、現預金などの金融資産を不動産に変えるだけで、相続税評価額を下げることができます。
不動産投資セミナーなどで、よく「賃貸用不動産は、相続税対策にもなる」といわれるのは、これが理由です。

ただ、相続税評価額が下がればなんでもよいということにはなりません。
不動産は、換金がしにくい資産です。そして、「実物」として残るので、金融資産のように、数字の計算だけで、簡単に分割できるような資産でもありません。
そのため、相続税評価額を下げることだけを目的にして建てたような物件は、その物件の立地によっては、誰も引き継ぎたいと思わない、「負動産」になってしまう可能性があります。

その点から考えると、都心部など立地の良い、賃貸需要のある区分所有の部屋であれば、換金性もあり、相続人同士で分割もしやすく、相続税対策にもなる、という意味でよいのではないか、と考えています。

たとえば、相続人が3人いるような時に、3部屋あれば、3人が1部屋ずつ相続で引き継ぐ、ということもしやすくなります。
もちろん、誰が、どの部屋を引き継ぐか、という問題も生じてくる場合もあります。ただその時は、賃貸需要があり、立地の良い物件であれば、購入希望者が見つかりやすいので、売却ができれば、そこで手にしたお金を3人で均等にわけるという形で、円満に解決するという方法もあります。

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この記事を書いた人

齋藤岳志

齋藤岳志CFP ・FPオフィス ケセラセラ横浜代表

1977年横浜市生まれ。2001年上智大学文学部哲学科卒。
百貨店、税理士事務所、経営コンサルティング会社への勤務を経て、2013年FPオフィス ケセラセラ横浜を開設。信用取引や商品先物取引、投資信託、FXなど投資という名の付くものは すべて経験し、その中で自身に一番合った大家業を2007年にスタート。 不動産投資に関するアドバイスを中心とした ファイナンシャルプランナーとして活動中.。著作に『FP大家だけが知っている資産形成に中古ワンルームを選ぶと失敗しない理由』(合同フォレスト)、『老後が不安……。貯金と年金で大丈夫ですか? インフレ到来で「貯めているだけ」は危険』(現代書林)がある。エフエム戸塚「戸塚井戸端会議。」レギュラー出演中。

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