元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
23年7月末にGAP撤退後にどのブランドが入るか注目されていた「ヒューリック銀座数寄屋橋ビル」だったが、ついにカルティエの旗艦店が進出するこがきまったようだ。4丁目交差点にくらべ数寄屋橋交差点周辺のビルでは、激しいテナント獲得争いが繰り広げられている。そんな「数寄屋橋攻防」を追う。
山下努2024/09/04
東京の千代田区と中央区の堺にある旧外堀にある数寄屋橋。この地名の由来は、江戸時代この界隈には織田有楽の邸宅が数寄屋風だった茶室があったことからといわれる。
だが、東京以外、とくに関西以西の若者には「松屋」といえば、百貨店ではなく牛丼店チェーンであるように、数寄屋橋といえば「牛丼の『すき家』がある橋かな?」といった程度の認識しかない。銀座・数寄屋橋の高級イメージは薄いようだ。
そんな数寄屋橋の晴海通りと銀座並木通りの交差点に面しているのがヒューリック銀座数寄屋橋ビル(旧数寄屋橋富士ビル)だ。住所は「中央区銀座4-2-11」と銀座4丁目に位置し、銀座の中心部になる。かつてここには旧富士銀行の数寄屋橋支店が入居しており、ヒューリックの前身の日本橋興業が保有していた。
このビル、2007年ごろは、世界最大の高級ブランドグループLVMHの中核企業であるルイ・ヴィトン(LV)が銀座の旗艦店として入る予定だった。しかし、08年のリーマンショックに端を発した世界的金融危機によってLVの銀座旗艦店の出店構想は白紙化した。
そこでヒューリックが慌てて探したテナントは、高級ブランドとは違う米国系カジュアルファッションブランドの「GAP」で、その名も堂々たる「GAPブラックシップ銀座」となった。
いまでこそ、日本で不振が伝えられるGAPだが、11年のフラグシップ銀座のオープン時には徹夜の行列ができ、超人気歌手のアヴリル・ラヴィーンがわざわざ来日しテープカットをしたほど力の入れようだった。しかしながら、「ユニクロ」やセレクトショップの「BEAMS」を愛用する日本の若者はトラディショナルな旧アメカジにはそえほど熱中はしなかったようだ。
加えて、GAPの入った銀座数寄屋橋ビルは銀座4丁目といっても4丁目交差点から離れており、「銀座」というよりどうしても「数寄屋橋」というイメージが強い。結果、2年前にGAP撤退の話が水面下でおこった。
そして、23年7月末にGAPブラックシップ銀座は閉店した。銀座数寄屋橋ビルにとってGAPは4階までの中核テナントだったため、ヒューリックにとっても大きな痛手だった。そのため新たなテナントとして、高級ブランド誘致に力を入れていたのである。
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山下努経済アナリスト
元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
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