不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
東京の再開発で注目されている神宮外苑と築地市場跡地。しかし、この2つの再開発をめぐっては自然破壊という共通した問題点があるという。水際を愛した永井荷風の足跡を辿りながら東京再開発について検証する。
山下努2024/04/15
徳川時代のエコリサイクル文化(「もったいない」という浅薄なパラダイムではない)は内陸まで張り巡らされた水運によっていた。
明治維新後、築地周辺(明石町一帯)にあった武家屋敷は処分され、外国人居留地が設定されていた。その築地居留地は、戦後、1964年の東京五輪に合わせて築地川、京橋川などをそのまま首都高にするなど、来たるモータリゼーション象徴となった。
こうした都市開発が2021年東京五輪前に急浮上した神宮外苑高層化の下地となった。
東京五輪を口実に行われた東京再々開発の総仕上げは3期目を目指す小池百合子知事の役回りとなるが、願わくば、2024年に行われる都知事選挙では「都民に大事なものは普通に残すという当たり前に考える知事」が立候補し、当選してほしい。
つまり、緑や自然を削って、国際(都市間)競争力強化というお題目のために、都民の財産をデベロッパーとともに勝手に囲い込まないでほしい。
その象徴が神宮外苑で、この問題で運動している市民はもとより、亡くなった坂本龍一さんやサザンオールスターズの桑田圭祐さんなどミュージシャンや、文化人は将来に残すべき緑の財産を消費し尽くす事は、次世代の政策決定権、都市計画、安らぎなどすべての未来を奪うことだと主張している。
2024年4月、神宮外苑の再開発について、その必要性、開発の資金計画などについてに初めて三井不動産の担当者が顔を出してNHKの単独インタビュー答えた。しかし、その内容はこれまでの主張を繰り返すだけだった。
都民不在の再開発計画は、神宮外苑だけではない。築地の再開発も同様だ。
東京の水際が摩天楼に変わる中、築地市場跡地は元々あった江戸期の小田原城主&松平の庭園だった浜離宮恩賜庭園と同じような潮入り庭園だった「浴恩園」として再生すべきだ。江戸幕府の財政改革を成し遂げた白河の松平氏は、超風流人であり、清澄白河から門前仲町あたりの旧深川区の界隈にいくつかの傑作庭園を残した。
本当に国際(都市間)競争力を高める都市にするのであれば、都市の文化の成熟と防災を兼ね備えた公共空間が必要だ。
ヒートアイランド現象が問題化されてひさしいが、これを少しでも緩和するのであれば、都心から埼玉方面まで海風が流れ込むようにすべきではないだろうか。
芝離宮と築地市場跡地に潮入り庭園を復活させれば、浜離宮と合わせて3つの潮入り庭園になる。海からの風が都心に流れ込むだろう。しかし、ここに高層ビルを建ててしまえば、いま以上に海からの風が入らず、夏の東京はさらに暑くなるかもしれない。
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山下努経済アナリスト
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