新築価格超え 中古マンションが1億円を超えるカラクリ

服、車、腕時計など価格が上昇する中で、中古市場も賑わっている。こうした中古価格の上昇がついにマンションにも及んできた。中古マンション価格が新築価格を上回る、そのカラクリをとは何か。

山下努2024/03/19

新築価格超え 中古マンションが1億円を超えるカラクリ
  • 2022年の首都圏の築10年の中古マンション価格は新築価格の132.5%
  • 新築購入の抽選漏れの人が中古マンションヘと流れ込んで
  • 供給過多が中古マン価格を押し上げている

築10年中古マンションの98%が新築価格を上回る価格に

古着から中古車、ロレックスまで新品より中古の方が高い時代がやってきたようだ。これはマンションも同様で、一部地域ではあるが中古マンションの価格が上がっている。

その理由は、新築の建築費が高騰していれば、建築費が安い時代にできた中古マンションは手頃な価格のため、人気が出で需要が上回り価格が上がる――という当たり前の構図だが、それを詳しく見ていくと、違った側面も見えてくる。

その1つが、経年劣化を覚悟すれば、中古マンションは新築よりしっかりした素材で高級に作られている場合もあるということだ。
実際、中古マンションが建てられたころの建築費指数と現在の指数を比較すると、10年前の建築費は断然安い。
しかも、過去5年~10年の間に建てられたマンションのほうが、中古物件経年劣化を考慮しても、なおお買い得と判断できる物件は少なくない。

東京カンテイによる中古マンションの価値を示すマンションリセールバリュー調査からもそれがわかる。
築後10年程度を経た中古マンションの平均希望売り出し価格を新築時と比べて算出したところ、18年時点では91.4%と新築時を下回り新築よりは安かったが、20年に100%を超えて逆転。そして、22年の首都圏の平均は132.5%に達し、21年から12.7ポイント上昇し、新築時の1.3倍の価格で売りに出されている。
この現象は、調査対象398駅のうち、全体の98%に当たる389駅で新築時の価格を中古が上回る「逆転現象」が起きている。

実際、築後20年のマンション中古の価格が新築時の1.5倍、2倍に跳ね上がっている物件もある。
東京カンテイによると、23区の中古マンション平均希望売り出し価格は、23年8月に70㎡あたり7030万円と3年前に比べて2割強高くなった。このうち、中央、渋谷、新宿、千代田、港、文京の都心の6区においては、中古マンションの売主の初回売り出しの希望価格は、70㎡換算で1億円を超えている。

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この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

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