元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
![晴海フラッグのマンション群](https://goldbeans.jp/wp/wp-content/uploads/2024/03/選手村.jpg)
中古マンション価格が上がるカラクリ
こうした背景の1つとして考えられるのは、次のようなことだ。
新築は高倍率の抽選がつきもので、人気の物件は抽選が当たらず買えない人が多くなる。一方、中古物件であれば、人気物件であっても、お金さえ積めば確実に買える。その結果が人気エリアの中古マンション価格が上がるとことになる。しかも、中古なら中古市場の値動きも確認できるため、そのときどき相場や、売却についてもシミュレートしやすいということもあるようだ。
つまり、その物件が欲しかったのに高倍率の抽選から漏れた人々は、中古市場に流れているというわけである。そうした経緯が、必要以上に中古物件価格が新築を逆転する現象が広がる要因になっているというわけだ。
なかでも、マンションの供給過剰ともいわれてきた湾岸エリアでは、元選手村の晴海フラッグをはじめ、勝どきや月島で今年から数年間にわたって、巨大なタワマンがいくつも供給される。これらは高倍率の抽選になることが予想され、それから漏れた人々が周辺地の中古物件に向かうことが予想され、いま以上に中古物件価格が押し上げられる可能性が高い。
人気エリアでなくても、マンションの新築価格があまりに高騰したことも要因の1つになる。
新築購入を諦めた人の半数前後は中古物件を探すので、新築との価格に落差があればあるほど、どんどん中古も売れて、結果、中古物件価格を押し上げるということだ。
欧米では、中古市場のほうが圧倒的に厚いが、日本も予期せぬ理由によって、そうなりそうである。
新築マンションが建設されれば、その物件は、中古として流通可能な物件のストックになる。現在もタワマンをはじめ新築マンションがオープンすれば、それが高値の中古のストック(車でいえば「新古車」のようなもの)となり、同時に人気エリアに以前からあった中古物件も動き出し、中古物件の価格は上がという構図が今後も続きそうではある。
ただし、このサイクルがいつまで続くかはわからない、ということだけは付け加えておきたい。