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倒産続出 土木・建設業界――日本経済復活のカギを握る土木・建設業の現状

コロナ禍が収束しつつある2022年春、本来であれば日本全体の景気回復に先行するはずの土木・建築業に倒産の臭いが漂い始めていた。そして、それが現実のものに……。土木・建築業が倒産の危機に陥った要因と復活の処方箋。

立川昭吾2024/04/12

倒産続出 土木・建設業界――日本経済復活のカギを握る土木・建設業の現状
  • 土木・建設業を倒産危機に追い込んだインボイス制度
  • もはや儲からない公共工事に手を出さない土木・建設会社
  • “昭和の臭い”を脱臭しなくては、土木・建設業にZ世代は寄りつかない

土木・建設業界の動向は好不況の指標

コロナが明けて経済も動き出しました。能登半島大地震がありましたが、株価も一時4万円台を超え、日本経済は力を取り戻しつつあります。これは全国的な動きになっています。
私はこれまで30年間、事業再生に取り組んできましたが、そんな中で感じているのは景気動向にはローテーションがあり、それを見極めることで、大まかな経済の方向性が見えてくるということです。そのターニングポイントを見極める指標的になるのが土木・建設業の動向です。そして、この土木・建設業界の動向によって、日本経済全体が大きく変わってきます。
このことは東京や大阪といった大都市圏にいる方はあまり見えてこないのですが、地方においては土木・建設の動向は、とても身近な存在で、町の繁華街、飲み屋さんなどで地元の土木・建設会社が儲かっている、儲かっていないといった話題がよく出てきます。これは、北は北海道から九州まで、まさに日本全国的に共通しています。

実際、1991年から始まったいわゆる不動産バブル崩壊も、最初にその兆候が現れたのが土木・建設業でした。
しかしながら、多くの方の目は、自動車や家電といった製造業、最近ではITなどに目が向いてしまいますが、地方経済も含めた日本全体の景気動向に影響を与えるのは実は土木・建設業なのです。
コロナ禍も収束しつつある2022年秋ごろから2023年春にかけて、実はこの土木・建設業にちょっと異変が起きていました。
その始まりは2022年5月ごろ、木材の供給不足、いわゆる「ウッドショック」が始まり、次にセメント不足と建設資材の不足が起きてきました。そのため22年夏ごろから景気回復に向かうのではと見られていた中で、土木・建設業の倒産予備軍が出てきます。

土木・建築の倒産続出、決定打はインボイス

私は調査や講演などで全国を歩いていますが、この当時から地元の方から地場の中堅どころの土木・建設会社が危ないというような話を耳にするようになり、22年の秋にその経済変動がやってきたと感じました。
その要因はさまざまありますが、特に土木・建設業の場合は、円安、人手不足、労務費の高騰、資材、建機の価格上昇が大きな要因になっています。
加えて、インボイス制度の導入がこれに拍車をかけました。

なぜかというと、建設業独特の「一人親方」という労務形態があります。一人親方というのは個人事業主と同じ自営ではあるのですが、労災保険に加入できるなどの土木・建設業界独特なものです。そんな一人親方は、建設会社から直接、あるいは2次受け、3次受けの下請けとして仕事を受けます。その中には年間売上1000万円以下の非課税業者になる一人親方も多くいます。
しかし、インボイス制度の導入によってこうした非課税の一人親方が消費税を支払う適格課税業者になることを求められ、これまでに益税になっていた消費税分の10%がカットされるようなことが起こっています。しかも、この業界も高齢化が進んでいるので、これを機会に引退するというという人も多くなりました。

新聞・テレビの報道では新しい働き方としてクローズアップされるフリーランスの人ばかりにスポットライトがあたりますが、実は建設業界の一人親方にとっても大きな問題になっています。しかも、土木建築業界では、一人親方が別の一人親方に仕事を頼む、鳶、鉄筋工、左官、外壁、内装、配管などさまざまな職人との独自のネットワークがあって、工事の進行状況によって工事の過程で入れ代わり立ち代わりいなくては仕事が進みません。この業界のこうした独特な形態が問題点になっているわけです。
とくに地方経済では、土木・建設業の崩壊が直に地域経済に大きな影響を与えます。23年の春頃から地方に行くと地場の建設土木業界からそういう危ない匂いが感じられました。

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この記事を書いた人

立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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