小池百合子氏の都知事選勝利でタワマン建設が加速 その背景にあるもの

2024年東京知事選挙は、現職の小池百合子氏が当選。「3期目はさらにスピードアップ、バージョンアップして政策を進めたい」と語った小池都政3期目で東京はどうなるのだろうか。

山下努2024/07/17

小池百合子氏の都知事選勝利でタワマン建設が加速 その背景にあるもの
  • 3期目の小池都政は国際的な都市間競争、都市機能を高めるために再開発がさらに推進される
  • タワマン開発によって富裕住民が優遇され「階級都市化」進む
  • 補助金を使った開発がさらに増え、補助金依存率の高いタワマンがさらに増える
  • ウォーターフロントから特色ある地域の商店街を分断したタワマン建設へ

タワマン建設が加速? その背景にあるもの

7月7日投開票の東京都知事選は、現職の小池百合子氏が強さを発揮し当選した。当初の予想では立憲民主党の前参議院議員の蓮舫氏との一騎打ちとみられていたが、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が2位に入ったことがサプライズになった。また、投票率が前回選挙の2020年に比べて5.62ポイント高い60.62%で、関心の高さを裏付けた。

小池都政の2期8年については、「「歴史と自然破壊」が進んだ? 小池百合子都知事の2期8年を検証」という記事で詳細にお伝えした。3期目の小池都政によって東京はどうなるのか。選挙戦では「世界で一番の都市、東京にしてまいります」と訴えてきた小池氏だが、3期目の小池都政で東京はどうなるのかを考えいきたい。

(関連記事)「歴史と自然破壊」が進んだ? 小池百合子都知事の2期8年を検証」

「国際競争が激化する中で経済を守り、かつ、成長させないといけない」と小池氏の3期目では、国際的な都市間競争を勝ち抜くため、東京の都市機能強化のうえで、さらに再開発が推進されることが予想される。その原動力になりそうなのが、タワマン(タワーマンション)建設の推進だ。
実は東京のタワマンは、23区を中心に国や都の補助金を推進力にしており、これが「再開発事業」の柱になっていることはあまり知られていない。こうしたことから今後も東京のタワマン建設がさらに進むことが予想される。とくにこれまでと違ったタワマン開発として、東京特有の巨大商店街との連結効果を狙った再開発が行われそうだ。

そんなタワマン建設が進んでいる区の1つが品川区である。なかでも、全国的にも知られる全長800mのアーケードからなる武蔵小山商店街は、その開発最前線になっている。
行政はこうした事業を「再開発」と称し、巨額な補助金を注ぎ込み、これまでのマイナス金利効果と相まって、超大手デベロッパーによる再開発コストをタワマンの高さのように天を貫くほどかけてきた。そして、小池都政が安泰になったことで、今後も公園など公有地周辺における再開発規制の緩和をそのままに、巨大商店街との連結が社会現象となるだろう。

ただ、これは東京23区、多摩地区の自治体の首長や議会、役所も同様の都市計画を支持することが多い。
というのも、東京都はもとより自治体、その議会まで再開発に公的な支援をするのは、富裕層を住民にできるからだ。つまり、税収を増やす一助になる。

一方で、都営住宅や区営・市営住宅の維持や建物更新、新規建設には熱心ではない。1億円を超えるタワマンに住む住民に比べ、低賃料の住宅に住む住民は、固定資産税を払わず、住民税の額も少ない。そのうえ福祉や医療費などで自治体にとって負担になるからだ。

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この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

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