小池百合子氏の都知事選勝利でタワマン建設が加速 その背景にあるもの

2024年東京知事選挙は、現職の小池百合子氏が当選。「3期目はさらにスピードアップ、バージョンアップして政策を進めたい」と語った小池都政3期目で東京はどうなるのだろうか。

山下努2024/07/17

特色ある地域の商店街を分断するタワマン開発

商店街を宣伝する品川区のポスター

再開発を巡っては、東京都に残る都内有数の大規模商店街が反対を始めている。
板橋区のハッピーロード大山商店街(560m)は、タワマン建設によってアーケード街をかなり前に都市計画決定された都道建設により分断されるため、有力スーパーの社長が先頭に立って反対運動を起こしている。

また、品川区の武蔵小山商店街の入り口部分の東急目黒線武蔵小山駅前には、近年、三井不動産と住友不動産がタワーマンションを建設され、駅前の風景が一変した。さらに、商店街の中ほどに3棟のタワマンを建てる計画が進んでおり、品川区も推進している。
いずれの計画も100億円前後の補助金が支出、または今後の支出が見込まれている。
このようにタワマン建設は、湾岸エリアだけではなく、大規模商店街とタワマンを連結させる計画も進んでいる。

武蔵小山の商店街のタワマンに長年反対してきた佐藤弥二郎元品川区議によると、武蔵小山商店街は戦前からの歴史があり、桑畑が目立った入り口部分は大森海岸などで海苔をつくっていた山本海苔店(中央区日本橋)などの海苔を干す場所だったという。

戦後の人口増加で建物が建ったが、所有者は山本海苔店のグループの山本保全(本社・中央区日本橋)で、同社が駅前のタワマン再開発も用地の9割以上を用意したという。
ちなみに、いまの中央区長は山本海苔店の副社長だった山本泰人氏である、中央区長を務め、同区の再開発は日本橋に本社がある三井不動産で、武蔵小山の再開発に直接かかわりはないが、結果的に中央区の再開発と似たような構図になっている。

多くの買い物客で賑わう長いアーケードの武蔵小山商店街

商店街の衰退を懸念する声がある一方、商店街にタワマンができると富裕層が数多く住居するため、商店街の売上増につながるという見方もある。
店主が高齢化や売上高の低迷に直面し、後継者がいないケースやタワマンや道路建設に賛成しやすいムードが高まるという流れもある。

また、タワマン建設で商店街の店舗の高級化やナショナルチェーン化が進むという懸念もある。
商店街は、いわば庶民にとっての「水平に長い大規模百貨店」ともいえる。その水平商店街が垂直に高く伸びるタワマンと連結される変容局面を迎えようとしている。そして、こうした動きは、容積率が低未利用な公園や公有地を再開発対象にする動きと軸を同じにしている。

折しも3期目を迎える小池都政発足直前に都庁の幹部職員の大手デベロッパーへの天下り問題がクローズアップされており、小池氏のいう「世界で一番の都市・東京」に影を落としている。
また、品川区一帯の開発に、ある新興宗教団体の関係者が詳しかったようで、「計画を事前に知ったわけではないだろうが、開発近隣地の土地所有や合意形成、開発コンサルタントの専任などの開発過程を洗いなおす価値がある」という声もあり、そうした検証も必要かも知れない。

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この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

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