銀座・数寄屋橋の攻防(1) ヒューリック銀座数寄屋橋ビルにカルティエ旗艦店進出へ

23年7月末にGAP撤退後にどのブランドが入るか注目されていた「ヒューリック銀座数寄屋橋ビル」だったが、ついにカルティエの旗艦店が進出するこがきまったようだ。4丁目交差点にくらべ数寄屋橋交差点周辺のビルでは、激しいテナント獲得争いが繰り広げられている。そんな「数寄屋橋攻防」を追う。

山下努2024/09/04

オープンは来春、内装工事もゴージャースに

ヒューリックをデベロッパー4位に躍進させた西浦三郎会長(右端/日光リゾートホテル開業レセプションにて)

さて、いまでこそ国内有数のデベロッパーとなっているヒューリックだが、前身の日本橋興業は旧富士銀行系の銀行資産管理社として設立された地味な会社だった。しかし、旧富士銀行の数寄屋橋支店長も務めた西浦三郎ヒューリック現会長(東条英機の右腕・参謀の一人といわれた陸軍大佐の西浦進氏陸軍大佐の子息で、みずほ銀行副頭取まで務めた)が、社長に就任すると、07年に現社名の「ヒューリック」に改名、業績を伸ばし、大手デベロッパー4位と躍進。日本を代表するデベロッパーの有力社となった。そんな西浦氏は、このビルを11年に11階建てのお洒落なビル(延べ床面積1万1600㎡)に建て替えたときから世界最高のブランドを呼び込むことを考えていたようだ。

そのヒューリック数寄屋橋ビルの大改装は23年から始まっており、GAPのあとにカルティエの進出が決まりになったのは昨年ごろのようだ。
GAPの店舗ですら、カーテンウォールの外に、銀座名物の柳をモチーフにしたアルミダイキャストと青いガラスで構成されたセンスのよいファザードを誇っていただけに、カルティエが入るにあたっての改装も時間がかかっているようだ。

スイスに本社を置くカルティエはLVMHより規模は小さいが、圧倒的なガリバー的存在のルイ・ヴィトンのLVMHグループに対抗できるコングロマリット企業群のリュシュモンのエースがカルティエである(3大グループのもうひとつは「ケリング」)。
そのため「あのカルティエを釣り上げるとはさすが智謀溢れる西浦さんだ」と業界での評判が高まっている。
少なくともカルティエが占める割合は、GAPが入っていた4フロアかそれ以上になると見られ、改装工事も大規模になっている。
カルティエの店舗はGAPと違い、作りが豪華なため、オープンは来春頃と見られている。

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山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

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