隅田川沿いタワマン開発から見えてくる京急・東武の不動産開発の思惑

旧ライオン本社跡地で進むタワマン建設――そこから見え隠れする人口減少が進むなかで鉄道会社の不動産開発に力を入れるこれだけの理由。

編集部・山下努2025/02/06

浅草~日光、観光ポテンシャルの高い東武

一方、一見するとカヤの外のような東武鉄道だが、増える訪日客によって注目されている。というのも、東武は日光など関東北部の観光地、埼玉県西部へのアクセスが今後も訪日客を取り込むポテンシャルを秘めているからだ。しかも、廃墟化が目立つ鬼怒川温泉など沿線の温泉街も、訪日客を呼び込めるとして東武は期待している。

2023年に運行開始した東武鉄道 新型特急「スペーシア X」

東武の主力線は、東上線と伊勢崎線だ。東上線は、東京と上州(群馬)を繋ぐ路線。また、伊勢崎線は「東武スカイツリーライン・伊勢崎線」と名前を変えて観光客を惹き付ける東京スカイツリー前面に出しつつ、訪日客で沸く浅草から栃木、群馬をつなぐ。しかも、東武にもその昔、両線を結んで関東平野をぐるっと一周させる壮大な計画があったようだ。

東武は、亀戸線などローカル線がある一方、東武野田線を「アーバンパークライナー」というネーミングでシティっぽさを懸命にPRしている。もっとも沿線地域のなかには「アーバンパークライナーという名は、千葉と埼玉の郷土色とマッチしない」という声もある。

とはいえ、今後は首都圏も人口減少が本格化するので、東武のイメージアップ作戦は痛いほどよくわかる。その背景には何としても儲かる不動産事業を成功させ、沿線以外にも自社ファンを増やしたいという思いからだろう。
そういう意味で、東武と京急が組んだ本所のマンション開発は、単に中規模タワマン開発というだけでなく、今後の鉄道事業を考えるといった視点で見ると、不動産開発に躍起にならざるをえない鉄道会社の思惑が見えてくるのである。

東京に集まる全国の交通系企業

東京でホテルやタワマン開発に参入してくる鉄道会社は少なくない。
実際、JR九州、近鉄、京阪電鉄、三重交通、両備バス(両備HD)などだ。両備HDは京阪と組んで八王子で大型マンションを建設する。

その一方で、非鉄道系のデベロッパーが建てるタワマンもどんどん東京都を離れて建設が進む。
京浜東北線の蕨駅(埼玉県)の駅前ではタワマンが次々と建設されている。価格は5000万円程度で、埼京線の十条駅前の1億円超のタワマンの半額だ。
西武の核線沿線では、小川駅(小平市)の前にもタワマンが建つ。もちろん西武線の沿線では、所沢駅、飯能駅、川越駅、ひばりが丘駅の前にもタワマンができている。

この先、人口減少で鉄道各社の駅に近い操車場や工場がリストラされ、マンションになる可能性もある。JR東日本の高輪ゲートウェイがまさにそうだった。そうなると次は駅構内の「駅上化マンション」も登場するのだろうか。

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