1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。
国産のほうれん草、大根、レタスから消滅が始まる
日本経済の立て直しには、2%の安定的な物価上昇が必要で、それにともなって最低賃金の引き上げが求められています。政府からの強い求めもあって上場企業は今年の春闘で、ベースアップを含めた5%前後の給与引き上げが行われました。
しかし、農業従事者はこういう時代の流れからは取り残されています。この状況をこのまま放置しておくと、日本の農家はいま以上に壊滅的状況に陥ってしまう。そういう危険を私は感じています。
このことは国も2050年に現在の農家の80%が消滅して18万戸になると予測しています。 このような国が減少を確実視している産業なんてありません。中小企業の倒産も大変な状態にありますが、農業のほうがさらに数も多く、身近に迫っている問題といえます。
農家の問題というと、どうしても私たちは米を中心に考えがちですが、農業は米だけでなく野菜もあります。
その野菜について細かく調べてみると、ほうれん草、大根、フルーツではさくらんぼなどは、2050年を待たずもっと早く消滅し、日本では作れなくなってしまう可能性があります。加えて、かぼちゃやレタスも非常に危ない状況にあります。米はもちろんそうですが、野菜が消えてしまう、これから先日本では作られなくなってしまうというのが実態なのです。
そうなればこうした野菜も輸入に頼らなければなりませんが、世界の人口は増加しており、各国は自国の食料確保を優先して、他国への輸出を規制する可能性もあります。これにどう対応したらよいかということも考える必要があります。
繰り返しになりますが、現状でも農家の数は92万9000戸、農業従事者の平均年齢は68.4歳で86%がすでに65歳以上。2050年には18万戸まで減少することが分かっており、その結果、米の生産は291万トンまで落ち込み、100万トンの米が不足することが、今現在もわかっているのです。
根拠のない食糧自給率45%という数字
そこで政府は補助金を出して農家の支援をしようとしています。しかし、私から見るとこうした対策の大半が無駄金のようにしか見えません。
その理由は、今、行われている農業対策は中小企業政策と同じで、お金だけ出していても問題解決にはならないということなのです。
もちろん、国もそれはわかっていて、大規模農業を推奨して米に限らず、野菜についても大規模農場で作れるような対策を打ち出そうとしています。
しかし、実際の現場では米がやっぱり一番収入が多く安定しているということから、農家は今なお、米中心の状況は変わっていません。つまり、野菜については状況に変化が見えていません。
また、国は食料自給率を45%にアップさせるといっていますが、これは何の根拠もない数字で、絶対に無理だと見られています。
世界各国の食糧自給率は、アメリカで110%、ドイツでも80 %あります。これに対して日本は38%と世界的に見ても最低です。
さらに食料を作るために必要な肥料は100%、輸入に頼っており、このままいけばコストがかかりすぎて、自給率を上げても、産業としては儲からないものでしかないのです。