【破綻 介護事業】超高齢時代に過去最多600件あまりが事業撤退

超高齢社会の日本。そんななかにあって介護施設の破綻が増えているという。その背景に潜むものとは何だったのか。

立川昭吾2024/08/19

当然のことですが、何といっても一番のポイントは、早めの対策ということになります。とはいえ、前にもいった ように、介護事業は慢性的な人手不足で、単純に1社だけで事業再生ができない可能性があります。つまり、自社だけでというのではなく業界全体として考える必要があります。

しかしながら、現在、介護施設は売り手市場になっています。というのも、施設間同士でスタッフの取り合いになっており、外から見ているだけではわかりませんが、業界の内情は非常に複雑になっています。こうした状況を整理するために公的、民間のどちらで進めたほうがよいかは明確にはいえませんが、まずは 業界全体でルール化することが必要だと思います。

次に、介護事業は人手がかかる事業ですが、効率化できる部分も多くあります。しかし、そうした部分でのデジタル化が遅れています。こうした点を見直し、本来業務の介護以外の部分のデジタル化を進める必要があります。こうしたIT化は補助金もあるのでそういったものを活用も1つの方法です。

また、介護分野では関連する、いわゆる介護ロボットや見守りロボットの開発も進んでいます。こうしたロボットを活用しながら人手がかからないような工夫をしていくことも大事です。
そのうえでこれらのことや財務・会計も含めた総合管理システムを導入することが、倒産防ぐための最初の対策になると思います。

欠かせない施設の更新、リニューアル

また、前に指摘したように介護事業は、旅館、ホテル、病院などのように装置産業です。そのため介護事業業界全体を見ると、M&Aがすごく多い。ただ、装置産業は建物も含施設そのものが陳腐化してくると、M&Aの値段が下がってきます。実際、介護施設のM&Aを何件が扱ったことがありますが、「これは難しいかな」と思う案件は、たいてい施設が古い。
とくに今、M&A市場に上がってきている案件は、20年ほど前に団塊世代が後期高齢者になる超高齢社会を予測して、規制緩和したときに全国各地に作られた介護施設が多くあります。そのためこの時期に建てられた介護施設は陳腐化してしまっています。
装置産業というものは、毎年、改造や改装をしなくてはなりません。ですから、介護施設も常に更新していかなければなりません。そのためには資金が必要で、M&Aをすすめ資本を強化する必要があります。

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この記事を書いた人

立川昭吾

立川昭吾

1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。

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