「古民家」につきものな農地もまとめて一括売却に必要なこと

増え続ける空き家。こうした空き家には人気のある古民家も多いが、取り引きにやっかいな農地付の物件もあって……。

田中裕治2024/06/16

1円不動産の現地内覧会を開催

2階からの眺望(左)/板の間の和室

こうした地目変更などについて農業委員会との打ち合わせが進んだところで売却活動の準備を開始します。

その中で必ずこの土地の引き受けてくれる方を探すと心に決めていた私は、過去にお世話になったことのあるメディア関係の方にメディアで掲載の協力のお願いすることにしました。
そうしたお願いをする中で『田舎暮らしの本』という雑誌からの取材依頼を受け、記事として掲載していただきました。また、当社でもネットを活用し、買主募集を開始しました。

こうしたことをするなかで「買いたい」という反響はあったのですが、やはり広大な土地の管理できず「古民家だけなら」という方も多くしました。しかし、条件は「古民家、農地、山林の一括売却」です。

一括して引き受けてくれるかを対象にした売却活動の一環として、現地内覧会を開催することにしました。これには依頼者と当社のスタッフが対応し、10組以上がご来場され、そのうち6組からより購入申込書をいただくことができました。

申込書をもらってからといっても、安心はできません。
というのも、市街化調整区域の農用地(農地以外に使用出来ない農地)が含まれていたため、売買には農業委員会の許可が必要になります。農業委員会の許可を取得するためには、基本的に買主が農家または農業法人でなければならず、このハードルが高いからです。

そこで購入申込書をいただけた方の中から農地法の許可が取得できそうな方で、土地・建物を大切に使っていただけそうな方を依頼者とご相談して決め、依頼者、購入希望者の両社で協力していただき農業委員会に農地法の許可を取得するべく、動いていきました。

複数回にわたって、ご購入希望者が甲府市農業委員会の窓口に通われ、依頼者、購入希望者の連名で農地法の3条許可申請。無事に農地法の3条許可の取得に成功しました。なお、許可が出るまでは3か月ほどの時間がかかりました。

その後、売買契約書、重要事項説明書の作成を行い書類ができたところで、売主様、買主様に予め資料をご送付し、事前に内容をご確認いただきました。
ご相談を受けてから10か月ほどかかりまいたが、無事に契約と引渡しをすることができました。

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先延ばしをせずに元気なうちに対応する

竹林もある敷地

今回の案件のポイントは「ハードルの高い地方の農地付古民家をどう手放すか」ということです。

今回ケースでは、不動産が市街化調整区域の農地だったり、未接道だったり、囲繞地だったりと簡単に売却できるものではありませんでした。しかも、持ち続けていて、相続ともなれば、その負担はそのまま相続人が引き継がなければなりません。
もちろん、相続放棄はできても、管理責任は残るため、後を任される方は大変な思いをされていたに違いありません。

そういった意味でも依頼者がお元気なうちに不動産処分に動かれたことで、内覧会でも直接来られた方と接し、事細かにご説明することができたことは、その後の売却がスムーズに進むことにつながったと思います。

当社としてはこのケースでの報酬はありませんでしたが、当初の依頼者との「必ず買主を探す」というお約束が守ることができました。
当社としては同様の案件を複数ご対応しているため、全てのご相談に対応できませんが、当社のような不動産会社が増えていくことを切に願っています。それが空き家を少なくる方法の1つだと思うのです。また、今回のケースでは当社のスタッフの力によるところも大きく、当社にとってもよい経験ができた案件となりました。

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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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