再建築不可、私道持分なし、動物も棲みついた空き家の売却

まったく使うあてもない相続した空き家。現状のまま売るためにやっておきたい最低限の準備、価格設定のポイント。

田中裕治2024/02/29

再建築不可、私道持分なし、動物も棲みついた空き家の売却
  • 問題点の洗い出しで見えてくる対処方法
  • 近隣からの苦情にいち早く対応して信頼関係を築く
  • 売れるまでは焦らない、諦めないが鉄則

煩わしいので買い取ってほしいと持ち込まれた物件

相続はしたけれど、フタをあけたら問題ばかり、売るに売れない不動産だったという話は往々にしてあるものです。

今回ご紹介する物件もそんな空き家のお話です。
相談者は父親が他界し横浜市の不動産を相続。そこに住む考えもないことから、売却したいと不動産会社に相談すると「建物が隣の家とつながっており、かつ、接道に問題があって建替えができないなので、扱えない」といわれた物件でした。当然ですが、こうした物件でも持っているだけでランニングコストはかかります。「とにかく煩わしいことはしたくないので、仲介ではなく不動産会社への買い取りを希望している」と、大手不動産会社から当社に話が持ち込まれました。

物件の詳細は以下になります。
・所在地は横浜市の東、都心に近い地区。駅からはバス利用が必要なエリア
・土地面積144.12㎡、建物面積101.02㎡。建物は築40年以上で老朽化もすすんでいる
・建物が隣家とくっついている連棟式建物(長屋)
・接道にも問題があり、建物の建替え・増改築が不可
・境界標が不明で路地部分の所有権もないため、路地部分の通行・掘削の際に承諾が必要
・庭木の手入れがされておらず、隣地への越境状態
・何か動物が住み着いている

建築増改築不可、長屋、私道の所有者は行方不明

物件の詳細を聞いたところで、実際に現地に行ってみると、話の通りJRの駅からはバス利用が必須で、現地まではバスで12分の平坦地。物件そのものは、車が通れる公道から路地の奥に入ったところにありました。
駐車場は1台分あるものの、長期間放置されていたため、庭木が生い茂っており、その枝葉が隣家に越境していました。中でも大きな問題は、大部分の境界標は見つからなかったことでした。
とはいえ、築40年超の建物内の各設備は老朽化が進んでいるものの、雨漏りや床の腐食がなかったことが救いでした。
ひと通りの現地調査では、以下のことが判明しました。

1)路地部分が建築基準法上の道路ではなく、接道義務を満たしていない。そのため建物の建替え・増改築不可であること
2)新築当時は、隣の建物と一体で連棟式建物(長屋)として建築された物件であること
3)路地部分が第三者所有地となっており、持分がない。しかも、私道所有者の2名のうち1名が行方不明

これ以外には、法令上の制限の調査において懸案事項となることはなく、漠然とこれなら行けるかなという感覚を得ました。

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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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