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再建築不可、私道持分なし、動物も棲みついた空き家の売却

まったく使うあてもない相続した空き家。現状のまま売るためにやっておきたい最低限の準備、価格設定のポイント。

田中裕治2024/02/29

それほど老朽化しているようには見えない玄関先

私道の問題解決に1年間

現地及び市役所等での調査を終え、相談者の「当社に買い取ってほしい」という希望に沿えるか検討を重ねました。
まず、最初にとったのが快適に住めるようにするためのリフォーム工事の見積もりで、その金額は500万円超となりました。
そのうえで周辺の不動産市況も考慮し、収支計算、当社として購入できる金額をはじき出し、相談者にご提示いたしました。

後日、相談者より提示金額で売却するとのご連絡をいただき、早速、契約関係の書類を準備し、数日後に紹介者である大手不動産会社の営業所内で当社が買主となる売買契約の締結、売買代金のお支払いをし、鍵・所有権の引渡しを受けました。
この時点で相談者の「ボロボロの空き家を手放したい」という悩みを解決することができました。

もちろん、買い取った当社はこの物件を売却しなくてなりません。
そこで取得後、やっておかなくてはならないことは、第三者所有の路地部分所有者との協議です。
前にお話ししたように路地部分所有者は2名でしたが、そのうち1名は行方知れず、もう1名は地元にある老舗の不動産会社ということがわかり、すぐにその不動産会社に路地の通行・掘削についての承諾のお願いに行きました。

当初は「自分には関係ない」と相手にしてもらえませんでしたが、諦めずに、再三、再四お願いを続けた結果、1年がかりでようやく「当社が路地を通行・掘削することは認める」という承諾書の取得に成功します。
ただし、当社が第三者に売却をした場合は、改めて譲渡先に対しても同様の内容の承諾をもらわねばならず、実際に承諾するかは地元の不動産会社がその時に判断するということになりました。

害獣駆除、境界標の設置、やっておきたい建物診断

路地の通行・掘削の承諾書の取得ができたところでお隣より「おたくの建物に何か動物が棲みついている。うちのほうにもきているので何とかしてほしい」と連絡をもらい、すぐに害獣駆除業者に依頼します。その後、住み着いていたのはハクビシンということがわかりました。

住みつかれるとやっかいなハクビシン

その次が土地の境界標が見当たらなかったことから、土地家屋調査士に依頼し、境界標を設置。あわせて近隣に迷惑をかけている大きな樹木の伐採を行いました。
売却にあたってはリフォーム工事を行わず、現状のままでの売却することにしました。
これは売却価格を抑えるということもありますが、空き家の使い方はさまざまで、どう使うかは買主に考えてもらったほうがよいという判断からでした。

ただ、放置されてきた空き家ということもあり、インスペクション(建物診断)だけは行うこととしました。
建物診断の結果は、築40年経過の老朽化物件ということもあって、一部の床が傾斜していたり、所々に不具合が生じていていることなどが判明しました。

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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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