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「事故物件」が売りづらい本当の理由とはいったい何か

「事故物件=売れない」というイメージが付きまとう。しかし、対応方法を間違えなければ住みやすい物件にすることも可能だ。にもかかわらず、なぜ売れないのか、その本当の理由とは。

田中裕治2023/10/17

「事故物件」が売りづらい本当の理由とはいったい何か
  • 高齢者の一人暮らし世帯が増えるなかで、孤独死による事故物件の増加が懸念されている
  • 特殊清掃、リフォーム、お祓いで安心感を与えて負のイメージを払拭することで売れる物件に
  • 事故物件のイメージで売れないわけではなく、金融機関の担保評価が低くなることが問題

146万1000世帯へと急増した高齢者の一人暮らし世帯

高齢化が進むなかで、家族構成も大きく変化しています。
これまで標準世帯といえば、夫婦に子ども2人というものでしたが、2017年には「単身で無職」の世帯が最多になったとの調査もあります。実際、国勢調査によれば2015年時点で全国の65歳以上の人のうち、17%に当たる約592万人が一人暮らしでしたが、22年には742万7000世帯が単独世帯になっています。とくに首都圏の1都3県では2040年に向けて、高齢者の一人暮らしが急増すると予測されています。

具体的には1都3県が顕著で、世帯数で見た75歳以上の一人暮らし世帯は、15年が90万6000世帯でしたが、40年には146万1000世帯へと増える見通しです。とくに団塊世代(1947~49年生まれ)が75歳を迎える2020年から25年に大きく増えることがわかっています。


こうした単身の高齢者世帯が増えると、さまざま問題やトラブルが予想されます。
その1つが見守りの問題で、この2020年4月には厚生労働省が単身高齢者を見守り強化のための各自治体を財政面で支援することを打ち出しています。また、孤独死問題もクローズアップされています。不動産的には孤独死があった物件は「事故物件」となり、後片付けや物件そのものの処分も難しくなります。

そんな事故物件をどう対応したらよいか――孤独死のあった神奈川県の物件についてご紹介します。

死後4カ月後に遺体が見つかった事故物件

 当該物件の概要は、駅から徒歩圏の住宅地内の戸建。土地面積は137.28平方メートル、道路との接道幅が2メートル、かつ、道路より下がったいわゆる旗竿地で、車両の駐車が困難なものの、建物の床面積は111.92平方メートル、1992年にハウスメーカー施工による軽量鉄骨造2階建ての物件でした。
この物件には男性が一人で住んでいましたが、病気で亡くなり、死後4カ月が経って発見されました。孤独死による戸建ての「事故物件」です。


相談は、亡くなった男性の相続人から売却依頼を受けた不動産会社からでした。これまでも売りに出していましたが、現状のままでの売り出しだったため、室内の状態が凄惨な状態で売れなかったとのこと。物件を見て収支計算、事業計画を立てたところ、最終的な事業収支としては厳しいものでしたが、その不動産会社とはこれまでのつき合いもあって、当社で買い取り、販売することにしました。
購入後、物件が道路より低かったため、排水を隣地の土地を通過して放流していたことが発覚。配管が通っている隣地の方から、「下水道管を撤去してほしい」と主張され、その工事を行うことになりました。

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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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