「事故物件」が売りづらい本当の理由とはいったい何か

「事故物件=売れない」というイメージが付きまとう。しかし、対応方法を間違えなければ住みやすい物件にすることも可能だ。にもかかわらず、なぜ売れないのか、その本当の理由とは。

田中裕治2023/10/17

特殊清掃、リフォーム、そして「お祓い」で安心感を

通常、こうした事故物件に対する実際の対応は、特殊清掃(異臭や汚れをなくすため、現場に残された血液や体液などの除去を行う作業)からはじまります。その後、外壁・屋根の塗装、キッチン・浴室・洗面化粧台・トイレの交換、フローリング張替えなど全面的なリフォームを施しました。
この物件のリフォームにあたっては、1級ホームステージャーによるカラーコーディネートとホームステージングを実施。また、買主に安心して買ってもらえるよう瑕疵担保責任保険を付保するための第三者機関の現場調査も実施し、検査も行い合格させました。

リビングは白を基調に明るく(Photo 著者提供)

加えて、隣地を通っていた下水道管の撤去工事を行い、新たに宅地よりも高いところにある前面道路に埋設されている下水道管に放流するために100万円以上の資金を投下し、ポンプアップ機械を設置しました。さらに孤独死があったこともあり、販売活動前にお祓いを行いました。事故物件では、お祓いをしてあげたほうが購入希望者も買いやすくなります。
購入後に改めて測量をした結果、当社が買い取った戸建ての接道幅は2メートル以上あり、建築基準法の接道義務を満たしていましたが、隣地の接道が1.98メートルと2メートルに満たず、建替えができない再建築不可物件ということが判明したため、そのままではお隣が将来、建替えができないことから、土地家屋調査士とお隣、当社の三者協議を行い、当社が買い取った戸建ての接道部分を調整し、お隣の土地も道路との接道幅を2メートルとしたのです。
この結果、当社が買い取った戸建てとお隣ともに建て替えができるようになり、将来起こりうるトラブルを事前に防ぎました。

一方、販売は他社ではなく自社販売で対応することにしました。
販売にあたっては孤独死のあった事故物件のため、売買契約前に購入希望者の方に融資の事前審査を行ってもらうことにしました。その理由は、事故物件の場合、金融機関がつける物件の評価額が低くなってしまい、希望する借入金額が借りられないことがあります。この物件も周辺相場に比べ15%ほど安い評価になりました。実はこれが事故物件の難しいところなのです。
実際、最初に購入申し込みをいただいた方は、融資の事前審査で、希望の金額を借入れができませんでした。最終的には、当社の販売ルートの中から融資の事前審査を通った購入希望者の方に売却しました。

事前に対応――低くなる事故物件の担保評価

前述したように「事故物件」とは過去にその物件で事件や事故などで亡くなった方や、孤独死があった物件のことを言います。そのようなことがあった不動産はどうしても嫌がられる傾向にあるため、普通の不動産に比べ金額的に安くなってしまいます。また、事故物件の内容によっては、売れないという場合もあります。

事故物件は一度、賃貸(あるいは売却)してしまうと、事故物件にならないといようなことがネットの記事などにあります。しかし、売買の場合は、売主が事故物件と知っている場合は、過去にその物件が何度も取り引きされたとしても、買主に伝えなければなりません。それを伝えないと、買主より損害賠償を請求されることもあります。
過去に「一度名義を変えれば伝えなくてよい」というような風潮がありました。そこでわざと第三者の名義を一度いれてから販売する不動産会社があったと聞いています。賃貸の場合は、地域によっては一度誰かが住んで退去された後は告知をしない場合もあります。また、当初は家賃半分で募集をし、更新のときに家賃を普通の金額に戻すということはよくあります。

そもそも最初から事故物件を扱わない不動産会社もあり、売却にはいくつものハードルがあります。しかし、諦めることはありません。当社のように事故物件でも、室内の状態がひどい状態でも買い取る不動産会社はあります。ただし、今回の例のように、事故物件の売買では、金融機関の評価額も低くなってしまうという点は念頭に置いておく必要があります。

『売れない不動産はない!』(田中裕治著/叶舎刊)より

1 2

この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

  • WEB

※このサイトは「事業再構築補助金」を活用しています