少子高齢、人口減少だけではない「空き家900万戸」の背景にあるもの

2023年10月時点の空き家の数は過去最高の900万戸、空き家率も13.8%と増え続ける一方で、さらに増えることが予想される。その原因は少子高齢、人口減少といわれるが、それだけにとどまらない空き家が増える日本が抱える課題とは何か。

沖原正也2024/06/07

少子高齢、人口減少だけではない「空き家900万戸」の背景にあるもの
  • 地震、火山、水害、高潮、それに津波のリスクが高い日本は、家を持つコストとリスクは他国比べて高い
  • 大都市圏に人口が集中するため、地方は非効率な産業ばかりで競争力が低い
  • 過疎が進む地方に予算投下する場合は、より集中と選択を重要視すべき

日本独特の地形がもたらす地域間格差

日本は地球上の7大プレートのうち、4大プレート(北米、ユーラシア、太平洋、フィリッピン海)がせめぎあい、山地が多く地震や火山が多い。山は急峻で、国土の可住面積27.3%に限られる。
欧州諸国の可住面積の割合は、イギリス84.6%、フランス72.5%、ドイツ66.7%の半分以下だ。このため、日本では野山を切り開いて人が住む山里や中山間地、埋立地が多い。

わが国は陸地面積の0.25%を占めるに過ぎないが、日本はプレート活動が動くような動きが活発なため、世界中で起きるマグニチュード6以上の地震の2割以上、活火山の1割を引き受けている。また、山が多く多雨気候のため土砂災害が頻繁に起こる。しかも、平地が少なく堤防を築き居住しているため、水害、高潮、それに津波のリスクも大きい。
このように日本人の約半数が災害危険地帯に居住している。このため、耐震や耐水や耐雪及び土砂災害対策のため国土インフラ及び家屋のコストが大陸の数倍になる。

たとえば、全国で空き家率が3番目に高い山梨県の平野で可住地の甲府盆地は、日本一高い富士山をはじめ、3000メートル級の山々に取り囲まれている。
すでに県民の人口は80万人を割り、これは東京都世田谷区より十数万人も少ない。県庁所在地の甲府市は、周辺自治体の吸収合併を重ねたものの、人口20万人を割ったままだ。

山梨県に限らず、政府も公共事業でこうした各地方を繋ぐ道路などインフラをくまなく整備し、可住エリアを広げてきた。しかしながら、こうした開発が農林水産業に依存した経済構造では十分な所得が得られないため、逆に商工業が発展した都市部に人口が流出し、数多くの限界集落や消滅自治体を生んできた。その不動産的な帰結が、地方に残された大量の空き家になっている。
加えて日本独特の地形は都市が発展するにつれ、地方との経済格差が生じさせてきた。いわゆる、地域間格差である。

もちろん、政府もただ地域間格差を野放しにしてきたわけではない。
戦後復興の目途がたった1962年に地域間の均衡ある発展を図ることを目標とした全国総合開発計画草案が閣議決定。その後、新全総、三全総、四全総、21世紀へと引き継がれてきた。ところが、現実は東京への一極集中が加速し、地域間格差は拡大し続けている。とくに日本は大陸にない特異な地形の影響を受けているため、その格差がより大きくなっている。

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沖原正也

沖原正也

山口県柳井市出身。東北大卒業後、マツダに入社し、人事の採用担当などで活躍。岸田文雄首相の妻となる女性も採用した。『「会社離れ」のススメ』の出版を期に、これを実践するために52歳で早期退職。退職後は、春は桜前線北上、夏は北海道避暑、秋は紅葉前線南下と気ままな生活を送っていたが、70歳を過ぎて相続土地処分のため多忙な生活を送ることとなった。これをきっかけに広島市内に相続不動産処分会社「滝桜不動産」を企業。自宅の近隣の空き家や農家の不動産の販売も引き受けている。

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