少子高齢、人口減少だけではない「空き家900万戸」の背景にあるもの

2023年10月時点の空き家の数は過去最高の900万戸、空き家率も13.8%と増え続ける一方で、さらに増えることが予想される。その原因は少子高齢、人口減少といわれるが、それだけにとどまらない空き家が増える日本が抱える課題とは何か。

沖原正也2024/06/07

世界に比べて圧倒的に非効率な農業

アメリカの大規模農業(Photo 123RF)

私は広島市で不動産業を営み、山口県の空き家や農家の不動産の売買を行っている。事業をするなかで感じるのは、「水の流れとは逆に、人の流れ(人口移動)は所得の低い所から高い所に流れる」という原則だ。

こう考えると、地方の産業はどうなるか。
基本的には地方の産業は、一次産業(農林水産、鉱業)と観光業である。これらが地域の暮らし、生活基盤としてしっかり根付いていれば、相応の所得が得られ、基本的に人口移動は起きないはずである。

日本の田植え

私自身も6年前まで山口県内で棚田による米作を営んでいた。しかし、離農した。
その理由は簡単である。わが家のコンバインは10俵/時の収穫能力しかなく、効率が悪すぎる。ギネスに記録されたイギリスのコンバインの記録は1700俵/時もあるのだ。
これは山口県だけというわけではない。日本の食糧の4分の1を生産する北海道に目を向けても北海道のコンバインの幅は最大で15ftで、海外の大陸地域では45ftのコンバインが使える。本州からは広大に見える北海道の農地であっても、大陸と比べれば比較にならないほど狭い。

以前、北海道の農家に「大陸と戦えるか?」と尋ねたところ「勝負にならない」との返事が返ってきた。北海道の離農農家数は約1000軒/年と、この事実を裏付けている。わが国の農業の現状は食料自給率維持のため、関税と多額の補助金による延命状況にあるとっても過言ではない。
地方の産業の中心である農業がこの状態では、地方が過疎化するのは当然といえよう。

1 2 3 4

この記事を書いた人

沖原正也

沖原正也

山口県柳井市出身。東北大卒業後、マツダに入社し、人事の採用担当などで活躍。岸田文雄首相の妻となる女性も採用した。『「会社離れ」のススメ』の出版を期に、これを実践するために52歳で早期退職。退職後は、春は桜前線北上、夏は北海道避暑、秋は紅葉前線南下と気ままな生活を送っていたが、70歳を過ぎて相続土地処分のため多忙な生活を送ることとなった。これをきっかけに広島市内に相続不動産処分会社「滝桜不動産」を企業。自宅の近隣の空き家や農家の不動産の販売も引き受けている。

  • WEB

※このサイトは「事業再構築補助金」を活用しています