少子高齢、人口減少だけではない「空き家900万戸」の背景にあるもの

2023年10月時点の空き家の数は過去最高の900万戸、空き家率も13.8%と増え続ける一方で、さらに増えることが予想される。その原因は少子高齢、人口減少といわれるが、それだけにとどまらない空き家が増える日本が抱える課題とは何か。

沖原正也2024/06/07

漁業、林業、鉱業がかかえる問題点

間伐もままならない

これは農業だけではない。
日本は南北に長く高温多湿かつ山地が7割を占め、緑に覆われた国土である。さらに植物は多様性に富み植物の種類は欧州より多い。この与件を考慮すれば林業は国際競争力があり、自立した産業になりえるように見える。ところが、国土全体が山地であるがゆえ、植生が垂直分布になり高度100メートルごとに木の種類が変わる、さらに、山岳地帯ゆえ、苗の植え付け、管理、伐採と搬出のため、林道整備(橋やトンネル)に多額の費用が掛かる。
これに比べて大陸の高緯度地帯は平地に単一樹が生育している。道路を付けトレーラーで運び出すだけなので、コストが極めて安くすむ。

以前、樹齢53年のヒノキ伐採搬出を複数の業者に依頼したことがあるが、どこも引き受けてくれなかった。理由は0.7ヘクタールと狭いため採算が合わないということだった。

戦中戦後の一時期、国は伐採のため多額の税金をつぎ込んみ植林した。しかし、その木材の使い道はない。逆に花粉症対策のため税金をつぎ込んで、杉林の3分の1の植え替えを検討している。

水産業はどうか。
近海に世界三大漁場があり、第1次産業のなかで漁業は、唯一生き残れる産業である。
なぜなら、金華山沖で黒潮と親潮がぶつかり寒流と暖流の魚が取れ、かつては1300万トンを超え、世界一の水産国であった。しかし、水産資源の枯渇の問題が浮上している。もちろん、温暖化という不確定要素があるにせよ、高付加価値魚種への誘導や資源保護を十分に指導してこなかった漁業行政失政による面が大きい。しかも、東アジア諸国の大型船による沖捕りも見逃せない要因である。

廃墟になった炭鉱

日本は地形が複雑なため、あらゆる鉱物を算出するが、鉱脈が浅く埋蔵量が少ない。このため。大陸の露天掘りと異なり、危険極まりない坑道彫りに頼ることになる。
商業ベースに乗らないため代表的な鉱物である炭鉱(石炭)は1か所(釧路)のみとなり、鉄鉱山は皆無となってしまつた。金に至ってはかってオホーツク紋別に東洋一といわれた鴻之舞金山があったが、鉱脈が浅いため、わずか50数年で掘りつくしてしまった(1973年閉山)。紋別から丸瀬布に至る街道沿いには、無人の原野となった金鉱山跡があるので、是非見学していただきたい。

対策はコンパクトシティで

東日本大震災の被害は約16兆円、これまでに40兆円近い復興資金が投入されてきた。
具体的には、住宅の高台移転、1兆円を超える巨大防潮堤、三陸を縦貫する高速道路などなどが行われてきた。もちろん、復興は重要だが、お叱りを承知のうえでいうならば、過疎が進むなかで、過剰インフラ投資ではあるまい、ということである。
世界三大漁場を活用した水産業に数兆円でも投資すれば、また違った世界が展開したのではないかとも思う。

1月の能登半島沖地震の復興では、過剰インフラ投資ではなく、基幹拠点へのコンパクト化が必要である。なによりも大切なのが水産業、輪島塗など競争力のある基幹産業への集中投資である。

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沖原正也

沖原正也

山口県柳井市出身。東北大卒業後、マツダに入社し、人事の採用担当などで活躍。岸田文雄首相の妻となる女性も採用した。『「会社離れ」のススメ』の出版を期に、これを実践するために52歳で早期退職。退職後は、春は桜前線北上、夏は北海道避暑、秋は紅葉前線南下と気ままな生活を送っていたが、70歳を過ぎて相続土地処分のため多忙な生活を送ることとなった。これをきっかけに広島市内に相続不動産処分会社「滝桜不動産」を企業。自宅の近隣の空き家や農家の不動産の販売も引き受けている。

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