引っ越しの際の「原状回復トラブル」――その原因と解決策

賃貸住宅のトラブルが増加傾向にある。その4割は「現状回復」だ。こうしたトラブルが増える原因と、その対策を探る。

大谷昭二2024/04/02

宅地建物取引業者のジレンマ

民間賃貸住宅の仲介・斡旋に関与する宅地建物取引業者の現状は、これらの多くは、不動産取引仲介業務だけでなく賃貸住宅経営者たる賃貸人から委託を受けて賃貸住宅の仲介・斡旋・管理業務を行っています。

もともと宅建業者は賃貸住宅の仲介・斡旋が主たる業務です。仲介・斡旋をして賃借人に部屋の鍵を渡した時点で本来の業務は終了します。しかし、宅建業者の多くは、賃貸人から新たな賃貸について仲介・斡旋業務の委託を受けようとして、その後も賃貸人に代わって管理業務を継続しています。
宅建業者は賃貸人からの委託がない以上、仲介・斡旋や管理業務がなしえないので、いきおい賃貸人から賃貸人有利の契約約款で仲介・斡旋・管理業務をするように申し向けられたり、賃貸借終了時に賃貸人からの敷金等の返還拒絶や原状回復業務を理由とする請求の代行をせざるを得ない状況に追い込まれることがあります。

こうした関係の中で宅建業者に無理難題を持ちかける賃貸人の存在がトラブル発生の一因となっています。
本来は宅建業者が賃貸人に独立対等の立場で賃貸住宅に関する専門家として素人たる消費者の間に立って、無用なトラブルを防止し情報弱者の消費者の利益擁護することが行なわなければならないと考えます。しかし、現状のような賃貸人との関係で業務が成り立っている以上、無理だと言えざるを得えません。

これらの問題を解決するには、ハウスメーカー、宅建業者、また金融機関も含めた、売る側は不動産投資とは、つまりはマンション経営、アパート経営であることしっかりと伝えること。また、賃貸住宅経営のノウハウを教えることが求められます。

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この記事を書いた人

大谷昭二

大谷昭二NPO法人日本住宅性能検査協会理事長/一般社団法人空き家流通促進機構会長/元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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