進む銀座の地盤沈下、「銀座ブランド」の見直しがはじまるか

不動産において東京23区の中の千代田区・中央区・港区は、人気、地価ともに高く「都心3区」として別格扱いにされている。しかし、新型コロナの影響によってその一角の中央区、中でも銀座が厳しい状況に追い込まれてしまった。コロナ後のインバウンドが戻り、以前の銀座に戻れるか。

浅野夏紀2023/08/30

いち早く銀座から撤退した森ビル

銀座の地盤沈下は、東急プラザ銀座だけではない。

すでに森ビルは、新型コロナ禍が本格化する前の2019年末から保有する銀座シックス(GINZA SIX、元松坂屋があった銀座中央通り6丁目の一等地に立地)の商業床、オフィス床をすべて売却している。このことは当時から他の銀座の商業ビル関係者の肝を冷やす出来事になった。

銀座シックスは、2017年に竣工。地下鉄銀座駅から徒歩2分という好立地。地上14階地下6階建て、延べ床面積14万2521㎡。地下2階~地上6階と13階(一部)は商業施設など、7階~12階と13階(一部)はオフィスとなっている。銀座の新しいランドマークとして注目を集めた。

そんな注目の施設から、森ビルは2年あまりで手を引いた。売却先は、J.フロントリテイリングを構成する大丸松坂屋百貨店で、銀座シックスの区分床を所有する銀座6丁目開発特定目的会社の優先出資持分33%を森ビルから買った。その価格は185億円。

銀座シックス外観
森ビルが撤退した銀座シックス

銀座シックスは旧松坂屋銀座店の跡地を中心に再開発されたもので、主要権利者は、J.フロントリテイリングにほか、L Real Estate(スポンサーは、ルイ・ヴィトン等のLVMHグループ)、などだ。

開発にあたっては周辺地の地上げや権利調整は森ビルが担当し、権利者は数十社に及ぶ。オフィス部分は小口でも転売され、外資には人気だ。

旧松坂屋の意向もあって、再開発事業に手慣れた森ビルが再開発における権利調整や権利変換などの難事業に乗り出した。当初の構想は地上200m級の高層ビル案だったため、地元地主、商店主が反発。03年に街づくり協議会を立ち上げ、いわゆる「銀座ルール」(高さ規制等の地区計画)に収まる現在のかたちに落ち着いたという経緯がある。

「銀座ブランド」見直しで銀座が銀座でなくなる

新型コロナによるインバウンドの爆買い終了、度重なる外出自粛と時短営業によってブランド店からドラッグストアまで立ち並ぶ銀座の活力が急速に失われてしまった。

実際、銀座では複数の店舗展開をしているブランドが密かに1店舗に集約を検討する動きが出ている。

「銀座ブランド」として、ビルの高さ制限やカンバンの色、店舗デザインなど銀座の各商店会には暗黙のルールがあり、進出する店舗はそれに合わせてきた。しかし、こうした商業施設の不振を受けて中央区は、銀座ルールの一部を改正し、商業床最重視の地区計画を見直し、オフォスを優遇する予定というのだが……。中国人の団体旅行が解禁になり、銀座はコロナ前の賑わいを取り戻すことができるか。

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浅野夏紀

浅野夏紀経済アナリスト・作家・不動産小説家。

1963年生まれ。東京都心在住。オフィス・ホテル・商業施設・公有地・借地等の不動産の分析、株など資産市場の分析に詳しい。住宅業界のカリスマ事業家が主人公で、創業者まで徹底的に切り捨てる政権の歴史的な不良債権処理の暗闘局面などを明かした『創業者追放~あるベンチャー経営者の風雲録』などの作品がある。

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