1978年生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、国内大手金融機関、外資系金融機関勤務を経て独立し、株式会社ライフサポートを設立。25年以上の株式投資経験を活かし、徹底的に企業の決算短信を読み込み、チャート分析からはわからない経済分析、個別企業分析をYouTube「カブアカちゃんねる」で展開。全決算を最速分析しているnote『カブアカマガジン』を日々更新中。
森羅万象の情報を見る重要性
10月5日、石破茂自民党総裁の後継者として、高市早苗元総務相が小泉純一郎農水相を破って自民党総裁に選ばれました。これを受けて週明けの6日株価は一気に上昇。株価は一時4万8000円台後半を付けました。
その理由は高市新総裁がこれまで打ち出してきた経済政策が積極財政、金融緩和であることから、株高、円安、債券安の「高市トレード」が再始動したと見られているからのようです。
しかしながら、10月15日に開かれるとされていた臨時国会と首班指名については、与党公明党との連立維持、野党との協議がすすでいないため延期の可能性も出てきており、この先は見通せない状況になっています。
そこで思い起こされるのが、「為替は森羅万象が作用するので、不完全な情報しかないことを自覚し、謙虚にマーケットと対話する」という神田真人前財務官(現アジア開発銀行総裁)の言葉です。
私の投資スタイルはファンダメンタルズですが、神田前財務官の言葉から、これまではあまり重視していなかったチャートについても目を配るようになりました。テクニカル分析を推奨するつもりはありませんが、株式投資ではまさに森羅万象の情報を考慮する必要があると思っています。
少し前になりますが、このことを痛感したのはTOTO(5332)の株価でした。
TOTOといえば水まわり機器メーカーで、温水洗浄便座のトップメーカーです。中国人の日本での爆買いが始まった当初は、電気炊飯器と並んでTOTOの温水洗浄便座は人気の商品でした。
このTOTOの株価の水準が10年前とほぼ同じなのです。インフレが進む中でこんなことがあるのかと正直思いました。言い換えれば、10年前と企業価値が変わっていないということなのです。むしろ目減りしているとも言えます。
もちろん配当が出ているということで言い訳はできるのでしょうが、株価だけを見れば、このインフレ時代を考えれば現金と同じ価値ということで目減りしているという見方もできると感じました。