政治・経済、都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナル集団。主に東京の不動産についてフィールドワークを重ねているが、再開発事業については全国各地の動きをウォッチしている。さらにアジア・欧米の状況についても明るいメンバーも参画している。
売却益から最大100万円を差し引ける制度
全国で空き地・空き家の増加が深刻化するなか、国土交通省は2020年7月から「低未利用土地の適切な利用・管理を促進するための特例措置」を運用している。
これは個人が保有する低未利用土地等を譲渡した際、長期譲渡所得の金額から最大100万円を控除できる制度で、控除額の20%分、つまり最大20万円の減税効果があるというもの。
対象となる取引の価格要件は、市街化区域や用途地域設定区域内などの場合は土地と上物の合計が800万円以下、それ以外の都市計画区域内は500万円以下だ(800万円以下への拡充は2023年1月から)。
低額な不動産取引では測量費・解体費などの譲渡費用が売却益を圧迫しがちになる。そこでこの控除によって手残りが増え、売却に踏み切りやすくなるという仕組みである。
具体的な節税効果は?
長期譲渡所得にかかる税率は所得税15%+住民税5%=合計約20%(復興特別所得税を含めると約20.3%)。最大100万円の控除による減税効果は、最大で20万円となる。
たとえば、相続で取得した土地(取得費不明)を300万円で売却するケースを考えてみよう。取得費が不明な場合、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算したとするとどうなるか。
この場合、譲渡価額300万円の取引で20万円の節税となり、手取りが実質6.7%増える計算になる。取得費が不明な古い相続土地ほど課税対象が膨らみやすく、控除の恩恵が大きい。

今回の調査では、所有期間31年超が65%を占めており、まさにこの制度が想定する「相続した古い土地」の売却促進に機能したようだ。
とはいえ、実際に活用する場合は個人の状況によって異なるため、適用を検討する際は税理士など専門家に相談したほうがよいだろう。
地方の少額物件が中心
国土交通省が2025年6~7月に実施した調査によると、2024年1月~12月に自治体が交付した確認書の件数は4817件。都道府県別の平均は約102件だった。
件数上位の自治体は茨城県(284件)、北海道・岐阜県(各224件)、長野県(206件)、愛知県(201件)の順。市町村別では宮崎県都城市(130件)、北海道北見市(82件)、熊本県荒尾市(65件)で、地方都市での積極活用が目立つ。1件あたりの譲渡対価の平均は303万円と、少額取引での利用が中心だった。
「塩漬け」の長期保有地が多数
制度の利用実態を見ると、譲渡前の状態は「空き地」が49.6%で最多、次いで「空き家」が37.9%。合わせて約9割が典型的な遊休不動産だった。
譲渡後の利用用途は「住宅」が72.1%を占め、新所有者が住まいを建てるケースが多かった。また、店舗・工場・事務所など事業用途への転換も15%超で、土地の再活性化が幅広い形で進んでいる。
所有期間については「31年以上」の土地が全体の65.1%。内訳は31~40年が14.4%、41~50年が19.8%、51年超が30.9%と、長期にわたって塩漬けになっていた土地が多かった。
実際、相続したものの、具体的な利用方法がなく持て余してきた土地が多いとみられ、この制度によって「動かせなかった土地」が市場に出てきたといえるだろう。
2023年の交付実績は4550件だったが、2024年は4817件と267件増加した。
相続はしたけれど…売却を検討しながら踏み切れずにいる土地オーナーは、この税制優遇の活用を一度検討してみてもよいだろう。










