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DX化に立ち後れる不動産業界(2)市川紘・ファシロ社長に聞く、不動産DXを進めるための要諦

DX化が遅れる日本の不動産業界で、現場改革を進めるベンチャーがファシロだ。提案時間8割削減、1500店舗超が導入する同社のDXは、業界構造をどう変えようとしているのか。Facilo・市川紘社長に聞く(聞き手・山下努)

山下努2026/01/07

DX化に立ち後れる不動産業界(2)市川紘・ファシロ社長に聞く、不動産DXを進めるための要諦
  • 日本の不動産DXは、現場の負担を減らすところから進めるのが現実的
  • 人手不足の業界では、デジタルで「一人分以上」の力を補う発想が欠かせない
  • DX化は業界全体を変えるより、黒子として積み重ねことで広がりを生む

提案時間8割削減、1500店舗超が導入する現場DX

DX化に立ち後れる日本の不動産業界。そうした状況に切り込んでいるのが、不動産店のDX化支援で注目されるベンチャー企業が、ファシロ(Facilo)だ。
同社の看板商品であるマイページの機能は、操作が簡単・スピーディーで、物件を比較・検討しやすいという定評がある。的確でタイムリーな提案する一方、顧客のアクセス傾向を分析・予測する。こうした同社のサービスは不動産業界のDX化の先駆けなっている。

まだ進化途中の同社だが、それでもすでに最大手クラスから全国の仲介業者1500店舗以上がこのマイページを中心としたサービスを導入している。
「導入している店舗では顧客への物件の提案時間を8割程度削減できた」と話すのはファシロを起業した市川紘社長だ。
市川社長は、米国の不動産ポータルサイトとして第10位の規模だったMovoto.comを全米4位にまで引き上げ、米国で「Top 100 Leaders in Real Estate and Construction」(不動産・建設分野のリーダー百選)にも選出された。
その市川社長に日本の不動産業界のIT化、DXについて聞いた。

日米で異なるDXの進み方と、その背景

――米国で不動産業の業務のIT化・DX化を体験して、日米の違いをどう見ていますか。
「米国では、DXを持ち込むスタートアップと既存の老舗業者との間で、訴訟を含めた激しい対立がありました。その対立には政府も絡み、訴訟や軋轢が生じる中で、破壊的なイノベーションが起きた側面があります。一方で、その影響でDX改革がうまく進まなかった部分もありました。そこは、もったいなかったと思います。
私が米国から帰国した際、日本では不動産の顧客体験向上をテーマに、DX事業者、既存業者、そして国が三位一体となって取り組めるのではないかと考えました。実際に、我々の顧客である仲介店舗などと二人三脚で改革を進めています」

住み替えの壁をどう越えるか──デジタルが担う役割

――住み替えについては、日米で約4倍の差があると言われていますが、その差は埋められるのでしょうか。
「米国では、住宅取引に関わる関係者の陣容が厚く、顧客の満足を引き出しやすい体制が整っています。売買や仲介が完結するまでの業務が専門分化され、複数の分野に分かれ、5人程度の専門家が連携して対応しています。これは、市場規模が大きい米国だからこそ可能な形です。
一方、日本の不動産店舗では、営業担当者一人が、米国で言えば複数人が担う業務をほぼ一人でこなしています。そこでデジタル技術の導入を加速すれば、現状の人員でも、実質的に5人分の仕事ができるようになると考えています。

日本の住宅市場は、住み替えが少ない分、将来性があるとも言えます。当社では『住み替えを軽やかに 住み替えで人生を鮮やかに』というメッセージを掲げていますが、社会全体で住み替えのハードルが下がれば、不動産の自由競争が促進され、人が集まるエリアとそうでないエリアがより明確になり、競争力のある街の人気が高まっていくでしょう」

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この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp

 

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