不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
DX化が遅れる日本の不動産業界で、現場改革を進めるベンチャーがファシロだ。提案時間8割削減、1500店舗超が導入する同社のDXは、業界構造をどう変えようとしているのか。Facilo・市川紘社長に聞く(聞き手・山下努)
山下努2026/01/07
――店舗とのやり取りを通じて進化していくサービスとは、具体的にどのようなものですか。
「例えば、店舗側が顧客から新しい要望を聞いた場合、1営業日以内に本社へ報告し、開発チームと課題を共有します。その結果として、毎週2桁規模のデザイン改善や新機能の追加を行い、年間では約1000件の新機軸や改善を打ち出してきました。スピードと高品質を両立させることを強く意識しています。
こうした取り組みによって、他社が簡単には追いつけない商品差別化ができていると考えています。現場感を大切にし、営業担当者は日常的に店舗に足を運びます。突き詰めれば、不動産会社で顧客の要望を聞き、その場でマイページを改善するという形も実現しています。
不動産店向けDXサービスは、まだ同質化競争が起きている段階ではありません。生みの苦しみを伴う新しい分野で勝負してきたため、現時点で我々と本格的に競合するライバルは多くありません。ただし、将来的な同質化競争は想定しています。他社が機能を真似ることはできても、使い勝手の差は目に見えない部分に表れます」

「黒船」ではなく「黒子」として業界を支える
――DXの強みを生かして、不動産のプラットフォームそのものを変えていく考えはありますか。
「私たちは“黒船”ではなく、“黒子”の役割を担いたいと考えています。レインズのような業界全体向けの不動産データベースを代替する意図はありません。あくまで、不動産取引の現場で、デジタルによって改善の余地がある部分を支援し、一歩ずつ改善していくことを狙っています」
AI時代にこそ必要とされる人の役割
――AIに代替される業務が増える中で、特に強化したい人材分野はどこでしょうか。
「AIは、簡単に人の業務を代替できるものではないと考えています。AIだけでは、顧客との信頼関係を構築できないからです。開発、営業、カスタマーサクセス(商品・サービスの利用促進)の3分野は、今後も人が担う重要な領域であり、ここを強化していきたい。
エンジニア部門では、細かな開発作業はAIが担えるようになるでしょう。しかし、新たなサービスの構想や企画・立案は人にしかできません。また、開発の上流で考えたサービスの意義を店舗側に理解してもらうことも重要で、それは営業職の役割です」
この記事を書いた人
山下努経済アナリスト
不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
※このサイトは「事業再構築補助金」を活用しています