政治・経済、都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナル集団。主に東京の不動産についてフィールドワークを重ねているが、再開発事業については全国各地の動きをウォッチしている。さらにアジア・欧米の状況についても明るいメンバーも参画している。
「残債が多すぎる」「名義変更を銀行が認めない」…問題はさまざま
住宅ローンの契約形態については、「単独名義」が73.3%と主流だが、2020年ごろから銀行、24年からはフラット35でもはじまった「ペアローン」で17.8%、「収入合算(連帯保証・連帯債務)」が9.0%と、夫婦双方が責任を負う契約形態も増加傾向にある。
そん中で問題になるのがペアローンや連帯債務で、離婚後に一方の収入が途絶えたり、相手の支払いが滞ると、もう一方に督促が届くなどの問題が発生する。しかも、名義変更やローンの切り替えを行おうとしても、金融機関が認められないこともあり、離婚をしても両者に返済義務が残るケースが多発している。
この調査でも、住宅ローン問題で実際にどのようなトラブルが生じているのかについて、「売りたくても残債が多く売却できない」「相手の同意が得られず売却が進まない」「ペアローンや名義変更が銀行に認められない」「離婚後も連帯債務が残り督促が届いた」などの声が挙がった。
こうしたトラブルの背景には、住宅ローンや不動産売却に関する知識不足、専門家への早期相談の不足があることも、この調査から明らかになった。
トラブル時の相談先については「家族や友人」が29.2%と最も多く、次いで「誰にも相談しない」が27.2%、「弁護士に相談」が26.2%と続く。しかし、住宅ローン問題や任意売却などに精通した専門家に相談した割合はわずか7%程度にとどまっている。
住宅ローン問題に、弁護士は役に立たない
住宅ローン返済が困難になった場合に選択肢となる「任意売却」については、「詳しく知っている」と答えた人は12.4%で、「全く知らない」が39.6%と、認知度の低さが際立つ。また、「任意売却を検討したい」は38.1%で、「わからない・放置」とする回答が約15%もあった。

インプルーブメント社長の安達真也氏は「ペアローンや連帯債務の仕組みを十分理解せずに契約している方も多い。金融機関としては契約時の『連帯債務・保証』は絶対であり、たとえ家を出ても支払い義務は残る。離婚問題そのものは弁護士に相談するが、自宅の売却や住宅ローン問題は弁護士が専門外であることも多い」と指摘する。
今回の調査結果は、住宅ローンを抱える夫婦の離婚問題が、単なる法律論や感情論では解決できず、金融・不動産の知識が必要ということを浮き彫りにしている。
コロナ禍から23年までに3年間は離婚件数は減少傾向にあったが、24年の離婚件数は18万7798組と増加に転じた。
離婚の増加とともに、こうしたトラブルが今後も増加することが予想される。人の感情は変わりることはあっても、住宅ローンの契約は簡単には変えられない。