1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。
上場企業472社が危険水域
2025年が明けました。
年明け早々の1月3日には、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画の中止をバイデン米大統領が命令、年末の12月23日には、ホンダと日産の経営統合のニュースが出るなど大きな動きがありました。
事業再生視点から、2025年の日本経済、特に大企業の経営状況についてお話したいと思います。
2024年は中小企業の経営悪化についてはさまざまなところで取り上げられています。実際、2024年1月~10月の中小企業の倒産累計は8323件となっており、2024年の年間倒産は1万社を超えるのではないかと見られています。年間1万件超える倒産件数は、11年ぶりの高い水準です。
一方、24年の後半にかけて大企業も非常に厳しい状況に置かれていることが明らかになってきています。
そのため2025年は、大企業のM&Aや倒産が続出するのではないかと、東京証券取引所や専門家の間で囁かれており、私自身も、その可能性は高いと思っています。
今まであまり目立たなかった大企業の経営状況も、悪化しつつあり、東京証券取引所の上場企業のうち、すでに472社が危険水域に達しているという発表もありました。
ビッグモーター、船井電器が次々倒産
例えば、つい先日、ビッグモーターが民事再生に追い込まれたことは記憶に新しいでしょう。
ビッグモーターは、伊藤忠商事とジェイ・ウィル・パートナーズが共同で再生を進めていましたが、自動車の修理に関する被害請求が次々と発生し、収拾がつかないため、民事再生手続きによって債権者確定をして再建を進めることのようです。
また、セブン&アイが、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていることも、日本企業の脆弱性を示す象徴的な出来事といえるでしょう。
セブン&アイについては日本の銀行団が、創業家の伊藤家を軸にセブン&アイ・ホールディングスを日本企業として存続させ、上場廃止にする方向で動いているようですが、その金額はなんと9兆円にものぼるといわれています。9兆円、10兆円という途方もない金額に、もはや金額の感覚が麻痺してしまいそうです。
さらに、10月24日には、ブラウン管テレビの製造で世界的に有名だった船井電機が破綻したのは、衝撃的な出来事でした
日本の家電業界は、多くの企業が苦境に立たされ、2016年にシャープは台湾の鴻海(ホンハイ)に買収されました。船井電機の破綻は、かつてソニーに次ぐと言われていた船井電機でさえも、経営破綻したことで、いまなお日本の家電企業が厳しい状況にあることを示唆しており、非常に不安を感じます。