1945年新潟生まれ。
中央大学商学部卒業後、東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)入社。退社後は、企業の倒産現場に数多く立会い、企業の倒産回避のノウハウをマスター。1995年設立のTSKプランニングで、コンサルタントとして経営危機に直面した企業の倒産回避および事業再生に関するコンサルティングを手掛けている。
著書に『隣の会社「なぜ?」潰れないのか』『脱常識のしたたか社長論。』『日本が潰してはいけない会社』など多数。
生き残りかけ、加速するM&A
このような大企業にとっても厳しい状況になっている背景の1つは、昔と違って、監査法人が厳格に審査するため、不正を隠蔽することが難しく、本当に経営が悪化している企業が明らかになっているのです。
実際、日産自動車やユニゾンホールディングス、大王製紙などの大企業も経営が悪化し、リストラを余儀なくされています。
すでに日産自動車は、世界的に9000人規模のリストラを行うことを発表。他の企業も経営が悪化すれば、人件費削減が大きな課題となるでしょう。
そんななかで12月23日には、その日産がホンダとの経営統合へ向けた協議入りを発表。日本の基幹産業である自動車産業も、もはや無関係ではいられないことが明確になっています。
このように大企業も倒産を避けるためのM&Aが、今後、増加する可能性があります。
最大の問題は「カントリーリスク」
大企業を取り巻く厳しさの最大の要因は、経済状況や消費者動向よりも、トランプ大統領の関税政策や、中国の習近平国家主席によるゼロコロナ政策などによる経済の減速、反スパイ法による日本人の拘束。さらにウクライナ戦争や中東問題などが要因と考えられます。
つまり、国内の経済環境だけでなく、いわばカントリーリスク、とくに中国経済のリスクが非常に大きくなっています。
中国経済の悪化に伴い、多くの日本企業が中国から撤退していますが、その影響は甚大で、日本の企業全体で、約1万社が中国リスクの影響を受けるといわれています。
大企業を見ても、パナソニックや新日鉄などが中国から撤退していますし、中国で成功したといわれていたモスバーガーも、全6店舗を閉鎖。伊勢丹も天津にある2店舗、上海の店舗を閉店しています。
さらに資生堂も中国市場の低迷により、経営が悪化。国内では優良企業と思われていた資生堂でさえ、売上の半分以上を中国市場に依存していたため、その影響は非常に大きく、関連事業のM&Aや売却を進めているようです。化粧品業界の巨人である資生堂が、これほど中国の影響を大きく受けていることに驚かされます。
これは中国だけではありません。
アメリカにおいても日本製鉄にいるUSスチールの買収計画の中止をバイデン大統領が命じるなど、日本企業のアメリカへの投資にもリスクがあることを認識させられました。
このようにカントリーリスクはますます増大することが予想され、大企業は世界中に進出しているため、世界中のリスクを常に把握していなければなりません。
今後はゼネコンや総合商社など、あらゆる業種がその影響を受ける可能性が高くなっています。
直近では、トランプ大統領の政策による関税引き上げや、中国経済の不安定化、韓国の政治混乱、2年目に突入したロシアのウクライナ侵攻など、こうしてみると、わが国の周辺国はカントリーリスクの高い国ばかりです。