一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。
1円物件として売り出すと意外な反応が
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こうしたさまざまな調査を終え、売却活動に入りました。
実際、この土地に建物を建てようとすれば、崖崩れを防ぐ工事などで数千万円単位での工事費がかかります。さらに道路後退(セットバック)工事及びそれに付随する土留め工事も必要となり、それらの工事にかかる総額がつかめないほどでした。
そこで販売価格を1円に設定し、売却活動を開始しました。
この価格が目を引いたためか、土地に興味を持つ購入希望者が2組現れました。そのなかから、建築に詳しい購入希望者と話を進めることとしました。
そして、契約締結前に売主・買主双方で注意点を共有。境界非明示売買、契約不適合責任免責を条件に、売買契約を締結しました。
なお、買主はこの崖地購入後は、崖地のごく一部の平坦地部分を駐車場として賃貸される予定でした。
崖地所有のリスクはあるものの、確かに1円で購入した崖地の平坦地部分を駐車場として月数千円で賃貸するということは投資的にはありなのかもしれません。
ただ「境界非明示売買」として売主は境界を明示せず、測量もしなくてよいというものにしたうえで、引渡し後に売主も買主も知らなかったことで買主に損害が発生しても売主はその損害を補償しないという「契約不適合責任免責」という条件を付けました。
結果として、土地は無事に売却され、依頼者が長年抱えていた負担を解消することができました。
契約金額が低額だったこともあり、手続きは売買契約と引渡しを同時に行う「一括決済」で行い、無事に契約が締結され、引渡しが終わりました。
諦めずに挑戦することで道は開ける
この物件は、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域の区域内でかつ、過去の崖崩れがあった急傾斜地というもので、私自身もかなり難しい物件だと思っていました。
しかし、売却活動をはじめて見ると2組からの申し込みがありました。
この物件の販売では、不動産取引における困難を乗り越えるためには何よりもチャレンジしえみることが必要であることを感じました。
「もう売れない」と思い込むか、「とにかくやってみようとチャレンジスする」かで、結果はおのずと違ってくるものです。
ただ、この案件も当社は依頼者より報酬がいただけないボランティア案件になってしまいましたが。