「レッドゾーン」区域の土地売却に必要なこと(神奈川県横須賀市)

相続した土地は、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地、所有者不明の隣地という崖崩れの危険性が高く、売却困難な「負動産」だった。この 難題山積の土地売却ができた理由とは。

田中裕治2025/02/02

「レッドゾーン」区域の土地売却に必要なこと(神奈川県横須賀市)
  • 相続した土地は「崖崩れのリスクが高すぎる」「需要がない」と地元不動産会社から断れ続けいわく付きの土地だった
  • 建物を建築するには、多額の工事費、上下水道、ガスの引き込みが必要だった
  • 1円物件とすると、2件の問い合わせがあり、最終的に売却に成功

崖崩れの記憶と「手放せない土地」

土地を所有していることが資産になると考えるのは一般的ですが、ときとしてそれが負担となることもあります。
神奈川県横須賀市でのある土地の売却相談は、その典型的な例でした。

相談内容は、依頼者が相続した横須賀にある土地の売却でした。
この土地は、依頼者の父親が知り合いの不動産会社から、「息子(依頼者)名義で資産としてどうか」とすすめられ、購入されたものでした。
この土地はほぼ全てが傾斜地となっており、かつ、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されており、一部が急傾斜地崩壊危険区域に指定されている崖でした。かけ崩れを起こさないように崖の保護工事をするために県の補助金を受けられる可能性はありましたが、順番待ちでいつになるかわかない、そんな土地でした。そうこうしているうちに依頼者の父親が他界。依頼者名義の土地だけが残されてしまいました。

父親が亡くなられたことをきっかけに、依頼者はこの土地を手放すことを決意。しかし、不動産会社に相談しても、「崖崩れのリスクが高すぎる」「需要がない」との理由で取り扱いを断られるばかりでした。
依頼者は自分の子どもへの相続を避けるため、売るに売れないことから、相続放棄で手放せるようにと土地の名義を母親に変更するなど、土地を手放すための手だてを講じていました。

当該物件の詳細を整理すると、以下のようになります。
・駅からはギリギリ徒歩圏内
・丘の上にある急傾斜地
・全体が急傾斜地、ほぼ全てが土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
・土地の一部が急傾斜地崩壊危険区域で、今後、その範囲が拡大される予定
・隣接地に所有者不明土地がある
・住宅地隣接で過去にこの土地で崖崩れが発生した
・10年以上前に倒木リスクをなくすために100万円上の費用をかけて一部伐採
・横須賀市より崖を適切に管理するよう通知書が届いている
・境界標が一部不明

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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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