1円物件 使えそうな用途もない山林を売るテクニック

車も入らない、場所も特定できない活用方法も見当たらない相続した山林4か所の処分。その方法とは――。

田中裕治2025/01/06

1円物件 使えそうな用途もない山林を売るテクニック
  • 接道面もない建築不可、傾斜地…長年放置された雑木林で一部は保安林という山林
  • 「固定資産税がかからないのなら」と現れた購入希望者
  • 物件価格は「1円」特殊需要にアプローチして売却を成功

4箇所の山林を処分してほしい

土地の利活用というと住宅、店舗、資材置き場、駐車場……最近では民泊などが思い浮かびますが、実はそれだけはありません。たとえば山林、一見すると用途は思いつかないような土地であっても、それを購入しようと考える方もいらっしゃいます。
今回、ご紹介する案件は、使い道がなさそうな荒れた山林の売買の実例です。

この案件の依頼者は父親の遺産として静岡県内の山林4ヵ所を相続した2人です。
依頼者の父親は、生前、不動産会社を経営。会社、個人それぞれで複数の不動産を所有していました。しかし、その多くが何らかの問題がある物件でした。

そのなかから相続した静岡県の山林4ヵ所を処分したいと当社に相談に来られました。
「資料を見る限り車も入りそうもない山林で、場所もわからないのですが、処分は可能でしょうか? 子どもに残したくないのでタダでもいいので手放したい」との依頼でした。

物件詳細は、以下のようにものです。
・物件の所在地は静岡県藤枝市、牧之原市、菊川市、川根本町
・全ての山林が駅からバス便のエリア
・建築基準法上の道路に接道していないため、建物の建築不可
・全体的に傾斜地
・周辺に上下水道の配管がない
・場所がどこかもわからない
・長年放置されていたため、雑木林となっている
・その一部は保安林

鬱蒼と茂った木に覆われた物件

依頼者に極力負担をかけずに売る方法

通常であれば資料をいただき、話をうかがったあとに、役場、現地調査を行うのですが、静岡県という遠隔地ということ。また、依頼者は有償での売却は考えておらず、引き取ってくれる人がいればその方に譲りしたい。金額の有無は問わないこということだったため、調査はインターネットや電話で行い、極力費用負担を抑えるかたちで、物件の基本情報を収集し、法的および物理的な状況を整理していきました。

難あり物件を多数取り扱う当社には、こうした物件をお探しのお客様が多数登録されています。そのため調査にお金をかけずに、購入希望者を探すことが可能です。そこで依頼者の承諾のもと、当社にご登録いただいているお客様に向けて、情報を発信しました。
幸いにもこの物件は、すべて山林でそれぞれの評価額も低く、固定資産税はかかっていませんでした。そのため募集をすると「固定資産税がかからないのであれば、お引受けします」という購入希望者が現れました。

早速、手を挙げていただいた購入希望と依頼者で協議を行い諸条件を整えました。
その結果「贈与契約」では譲渡税がかかってしまう可能性があるため「売買契約」というかたちで調整を行い、売買契約書は、当社で作成。後日、依頼者、買主様に来社いただき、そこで売買契約を締結しました。
登記申請については、買主様がコストをかけたくないとのことで、買主様自ら法務局と打ち合わせを行い、所有権移転登記に必要な登記申請書、登記原因証明情報、委任状を作成。それに依頼者に署名いただき本人申請にて登記申請を行い、すべての手続きが無事に完了しました。

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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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