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知らぬ間に「廃墟になった空き家」を相続 相続登記義務化の落とし穴

夫が他界して数年、突然、縁もゆかりもない自治体の役所から電話で、廃墟になった空き家の存在を知った相談者。今さら相続放棄もできずにその空き家処分に動き出すことに。2024年4が1日から相続登記義務化が開始されるが、誰にでも身に覚えのない空き家や空き地問題がこれから出てくる可能性がある。

田中裕治2024/01/23

売却前にかならずやっておきたいこと

こうした空き家、とくにこの物件のような放置状態の空き家を売却する際に重要なことは近隣に方へのご挨拶です。
 その際にご近所の方に必ずお伝えししなくてはならないことは、
「今まで管理が行き届かず、ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。売主さまともども深くお詫び申し上げます」というお詫びです。
さらに当社から「私が管理会社となり、今後売却活動を進めていきます」ともお伝えします。
最後に「不動産を探しているお知り合いの方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください」と付け加えます。なんといっても売却後のスムーズな関係を構築するためには、周辺のみなさんとの関係作りが重要なのです。

こうした現地調査、近隣のみなさんへのご挨拶と見学を終えた後日、現地をご見学されたお客さまより購入の意思があり、購入申込書をいただくことができました。
ご購入者は、千葉県在住の建築関係の方で自分でこの家を綺麗にして住みたいという理由から購入を決められました。

その後、ご相談者と協議を行い、最終的にその購入希望者の方に現況の廃墟と化した状態のまま、お買い求めいただきました。
当初タダでもいいとうことでしたが、結果的に10万円ほどでお話をまとめることができました。

相続登記義務化で知らない不動産が次々出てくる?

どんな遺産があるかを明確にしておくことが必要

この案件のポイントは、「知らない怖さ」です。
今回のご相談者は、ご主人が他界されて数年後にどうしようもない不動産を相続されていたことを知りました。
仮になくなる以前、あるいは直後この廃墟と化した不動産があり、相続しなければならないことがわかっていれば、相続放棄という選択肢もあったでしょう。でも、そういった相続物件があることを知らなかった……。もしかすると、亡くなられたご主人もご存じなかったかもしれません。

2024年4月1日からは相続登記が義務化されます。こうなると自分も知らない地方の土地を相続していたということが、次々と出てくることがあるかもしれません。
ひと昔前までは、鉄道が通る、道路ができる、送電線が設置されるなど、開発にあたって知らない土地を持っていて、それが売れたといった話も耳にすることもありました。しかし、時代は変わり空き家問題が大きくクローズアップされています。
知らない土地を相続していた――こういったことが起きないようにするためにも、自分の親世代も含めて知らない不動産がないか、いま一度確認されてみてはいかがでしょうか。
これも遺された方々が困らないようにする「相続対策」です。

「売れない不動産はない!」田中裕治 著
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この記事を書いた人

田中裕治

田中裕治株式会社リライト代表取締役

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で株式会社リライトを設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。また、神奈川県横浜市神奈川区で空き家を有志とともにで再生し、家族食堂など他世代交流拠点「子安の丘みんなの家」を運営している。
著書に『売れない不動産はない!』(叶舎刊)『困った不動産を高く売る裏ワザ』(ぱる出版刊)『不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』(ファストブック刊)がある。

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