ペロブスカイト太陽電池 次世代の再生可能エネルギーが作る未来

いち早く太陽光発電に取り組みトップランナーだった日本だったが、今や中国をはじめとした世界各国に遅れをとっている。そんななかで日本人が発明し、素材調達で国内で可能という新たな太陽光電池「ペロブスカイト太陽電池」に注目が集まっている。その実力と可能性を探る。

Gold beans.編集部2023/12/27

日本発の新技術

このペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授(ノーベル賞候補)によって発明された。
「ペロブスカイト」とは、金属イオンとハロゲンイオンで構成される結晶構造のこと。
2023年12月現在、実用化されているペロブスカイト太陽電池の最高変換効率は29.1%。これは12月に中国メーカー「LONGi Solar Technology」社が発表した結晶シリコン太陽電池セルの変換効率世界記録27.09%をも上回る値になっている。

しかも、ペロブスカイト太陽電池の製造には、シリコン太陽電池に必要な高温・高真空の設備は不要なのだ。そのため製造コストを大幅に削減できる可能性がある。しかも、薄膜で柔軟性があるため、曲面や建物の壁面など、さまざまな場所に設置することもできる。
こうした高い変換効率、低コスト、柔軟性などの特徴から、次世代の太陽電池として注目されているというわけだ。

発明した宮坂力教授を取り上げたテレビ東京の「居間からサイエンス #1 ペロブスカイト太陽電池」という番組は、「2023年度 科学放送高柳賞」の優秀賞を受賞するなど、ペロブスカイト太陽電池の注目度は高まる一方なのだ。

番組でペロブスカイト太陽電池を紹介する宮坂力教授 (Photo (c)BSテレ東)

優秀賞を受賞した 「#1 ペロブスカイト太陽電池」は2024年1月31日(水)よる10時から再放送の予定

素材も国内のみで調達可能

このペロブスカイト太陽電池が注目されるのは、原料のヨウ素が日本で採取ができるということも、もう1つの大きな理由になっている。
日本のヨウ素は、主に水溶性天然ガス鉱床に付随する「かん水」から生産される。かん水とは、地下水に溶け込んだ天然ガスやその他の物質の総称で、このかん水には、ヨウ素が海水の約2000倍含まれ、そこからヨウ素の濃縮・精製が可能だ。

そして、日本におけるヨウ素の生産量は、2022年度で約9400トンと、日本は世界第2位のヨウ素生産国なのだ。千葉県には国内最大規模の水溶性天然ガス鉱床の南関東ガス田があり、日本の要素生産量の約80%は千葉県で生産されている。
とはいえ、良いことずくめとも言い切れないこともある。天然ガスは東京でも生産も行われていたが、ガス採掘に伴う地下水汲み上げ(揚水)よって、地盤沈下を招いたことから、採掘が規制されるなど、開発にあたっては地盤沈下の問題も指摘され、増産にあたってはこうした問題への取り組みが求められる。

1 2 3 4

この記事を書いた人

Gold beans.編集部

Gold beans.編集部

  • WEB

※このサイトは「事業再構築補助金」を活用しています