当時マンション供給戸数トップの大京に新卒入社で5年間在籍、その後26年間は在日オーストラリア大使館、2018年から豪州最大手不動産会社に勤務、2021年に独立してコンサルタント業と不動産エージェント業を兼業している。趣味はテニス、マンション管理、コントラクトブリッジ。
成長を続けるオーストラリア経済
日本の約20倍の広大な国土に人口はわずか2680万人、人口密度が低くゆったりしたイメージがあるオーストラリアですが、実は居住に適した土地は意外と少なく、人口のほぼ半分はシドニー、メルボルン、ブリスベンの3都市に集中しています。このため不動産価格は長期に渡って上昇を続けており、最近はこれら大都市で一戸建てを所有するのは大変な贅沢で、新しく供給される住宅の多くはユニット(日本でいうマンション)です。
意外と知られていませんが、オーストラリアは1992年度からコロナ禍まで28年連続の経済成長を成し遂げた唯一の先進国なのです。この長く続いた経済成長を支えたのは豊富な資源と人材です。
人口の自然増はもちろん、多くの高度人材を含む移民増がコンスタントに続いており、2030年までに3000万人、2040年までに3500万人を超える見込みです。このような状況ですからコロナ禍後は、移民や留学生の受け入れ再開とともに住宅不足が深刻になり、住宅価格、家賃ともに高騰。人々の暮らしに大きな影響が出始めています。
日豪の立場が逆転した不動産市場
具体的な不動産価格は、不動産情報大手CoreLogicによると2023年9月の住宅物件取引の中間値はオーストラリア全体で74万668オーストラリアドル(約7036万円)、シドニー111万660オーストラリアドル(約1億551万円)、西海岸のパースでも61万8363オーストラリアドル(約5874万円)となっています。
日本がバブル経済に湧いた1980年代後半、多くの日系企業や日本人投資家がオーストラリアの不動産を買い漁ったものですが、今やオーストラリアの不動産価格は日本の大都市圏とほぼ同じで、地方にいたってはそれ以上になっています。最近では北海道のニセコなどリゾート地でオーストラリア人の不動産購入が増えているといった報道をしばしば目にしますが、不動産購入にあたっては立場が逆転したようです。こうしたオーストラリアの経済成長、不動産価格の高騰からオーストラリア人が日本の不動産を安いと感じていることも納得できるのではないでしょうか。