【胃の不調】胃痛、食べ過ぎ、ストレス…症状別「漢方」の使い分け

胃の不調は、胃腸が弱い、食生活やストレスなど原因や症状はさまざま。そんな胃の不調、症状に合った漢方薬を徹底解説。

斉藤明美2025/01/17

3)イライラ、不眠を伴うストレスが原因の気滞タイプ

精神的なストレスや緊張により自律神経の働きが乱れると、全身に「気」を巡らせる「肝」の不調が起こります。「肝」の不調はイライラや不眠を伴う食欲不振、のどのつかえ感、胸やけなどの症状が現れます。「気」のバランスを整え、巡らせながら胃腸の機能を改善します。

【胃の不調の具体的な症状と傾向:精神的ストレスに伴う胃痛・腹痛、食欲不振、吐き気】
*柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
精神的ストレスが胃腸に影響して胃痛・腹痛、食欲不振、吐き気などを起こす方。
首筋のこわばり、首から上の汗、のぼせ、頭痛を伴う症状が出る場合こともあります。
”柴胡”と”芍薬(シャクヤク)”で「気」の発散をはかることで自律神経の緊張をゆるめ、”人参(ニンジン)”や”生姜(ショウキョウ)”で胃を温めながら、胃腸の機能を改善します。
長引いた風邪に用いることもあります。

【胃の不調の具体的な症状と傾向:のどのつかえ感、不安神経症を伴う吐き気や食欲不振などの神経性胃炎に】
*半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
気分がふさいでのど・胸のつかえ感があるためつい咳払いをしたり、不安神経症、不眠、吐き気や食欲不振などの症状がある方。動悸、めまい、胸苦しさ、咳を伴うこともあります。
ストレスをためがちな人は「気」の巡りが悪くなり、のどや胸のあたりでつかえてしまい、「気」だけでなく「水」も巡らなくなることがあり、そのことが原因で起こります。
”半夏(ハンゲ)”と”厚朴”でつかえた気を押し下げ、”茯苓(ブクリョウ)”や”生姜で”胃の機能を高めながら”蘇葉(ソヨウ/紫蘇の葉)”の香りで気持ちをのびやかに整えます。

【胃の不調のワンポイントアドバイス】
胃腸の機能低下の際は、体調に合わせた食生活を整えることが大切です。具体的には以下を参考にしてください。
・胃腸の働きを助けるジャガイモ・山芋、消化酵素を多く含む大根、胃の粘膜を修復するキャベツなどを取り入れる。
・食事は就寝2時間前までには済ませ、食べ過ぎ・飲み過ぎを避け、食べる量も腹八分目が基準になります。
・消化のよいものを選び、よく噛んで、ゆっくり食べる。
・刺激物は控えめにする。
・ストレス発散や適度な運動、十分な睡眠をとる。

次回は、「風邪」について漢方薬を紹介します。

斉藤明美『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』

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この記事を書いた人

斉藤明美

斉藤明美薬剤師・医学博士

北里大学薬学部卒業後、大学病院、企業診療所、透析施設で薬剤師として勤務。その後、製薬会社で企画販売に従事し、体調を崩した時に漢方薬に出会い、漢方を学びはじめる。日本漢方協会漢方講座を経て、田畑隆一郎先生の無門塾入門、愛全診療所 蓮村幸兌先生(漢方専門医)の漢方外来にて研修。現在は「より健やかに、更に美しく」を目指して患者さんの漢方相談、わかりやすい漢方の啓蒙活動に取り組んでいる。著書に『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』(ごきげんビジネス出版)がある。

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