政治・経済、都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナル集団。主に東京の不動産についてフィールドワークを重ねているが、再開発事業については全国各地の動きをウォッチしている。さらにアジア・欧米の状況についても明るいメンバーも参画している。
価格下落と銀行融資の関係
「銀行がマンション購入融資をしなくなっているんですよ。転売目的はもちろん、パワーカップル層への与信も厳しくなっています」
こう話すのは、あるメガバンクの幹部だ。日銀の利上げや海外投資家の動向ではなく、銀行自身が意図的に融資の蛇口を締めているというのだ。
その影響が、数字に出始めている。
当サイト既報や、不動産調査会社・東京カンテイの「三大都市圏・主要都市別中古マンション価格推移」によると、2026年2月の東京都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)の中古マンション平均価格(70㎡換算)は前月比0.2%減の1億8761万円となり、2023年以来続いてきた37カ月連続の上昇がストップ。4月23日に発表された3月のデータでも前月比0.2%安の1億8732万円と、2カ月連続の下落が確認された。
【関連記事】
【中古タワマン】東京都心部で価格下落 大阪は北区一強で全体を押し上げ
6年で2.3倍 マンション価格上昇の軌跡
そもそも、都心6区のマンション価格はどこまで上がってきたのか。コロナ禍直前の2020年1月時点で約8154万円だったものが、2026年には1億8000万円を超えた。6年で2.3倍という、バブル期並みのスピードだ。
この高騰を支えたのは3つの需要層だった。①世帯年収2000万円超のパワーカップル層が低金利を武器にペアローンで都心物件を購入、②国内富裕層が相続税対策として現物不動産へ資金を移動、③円安を背景にした欧米・アジアの海外投資マネーが流入——この3つが都心マンションの価格を押し上げてきた。
銀行はなぜ、蛇口を締めたのか
この流れに変化をもたらしたのが、銀行の融資姿勢の変化だ。前述のメガバンク幹部によれば、その背景には「政府の意向」があるという。価格高騰に歯止めをかけたい政府の空気を忖度し、銀行側が自主的に融資を絞り込んでいるというのだ。
さらにメガバンク側にも事情がある。日銀の利上げにより銀行収益が膨らんでいることへの批判をかわしたいという思惑だ。
仮に4月下旬の金融政策決定会合で0.25%の追加利上げが行われ政策金利が1%になれば、3メガバンクの純利益は2880億円ほど押し上げられ4兆円超えになると試算されている。「儲けすぎ」という世論の目を意識して、マンション融資を絞ることで社会的な批判をかわしたい、そんな計算も働いているとみられる。
ただし、この影響は限定的だという見方もある。
「融資が絞られているのは2〜3億円の価格帯です。そもそも外国人は20〜30億円の超高額物件でもキャッシュで買いますから、影響は限定的です」(前述)
中古マンマンション価格は「調整」か「転換」か
実際、東京23区全体で見れば22カ月連続の上昇が続き、平均価格は1億2349万円と過去最高を更新中だ。都心6区が先に崩れ始めているにすぎない、という見方もできる。
ただ、不動産市場の歴史を振り返ると、価格調整は常に「最もバブル化した高額帯」から始まる。港区などの超高額物件では、積み上がった期待値のプレミアムが剥落し始め、5000万円単位の値下げも報じられている。
平成バブル崩壊は、日銀が総量規制という形で不動産融資を一気に止めたことで起きた。いわば蛇口をいきなり締めたようなものだった。今回は違う。崩壊ではなく軟着陸を狙い、ジワジワと絞っていると見ることもできる。
2カ月連続の下落が示すのは、都心6区の価格がいよいよ実需の限界水準に近づいてきたというシグナルかもしれない。「調整」なのか「転換」なのか、その答えは今後のデータが示してくれるだろう。









