元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
せっかくの大型開発も、テナントが埋まらない大箱ビル
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そこら中にミッドタウンを造っている三井不動産は、「東京ミッドタウン」(八重洲)では、客数が少ないようだ。東京都の容積率ボーナスを引き出した巨大再開発だが、雨の日の平日などはガラガラ感がある。
これは東芝傘下の銀座・数寄屋橋の土地・ビルを買った東急不動産も同様。
そんな東急不動産の「東急プラザ銀座」は、コロナもあって客入りが悪く、不動産はノンバンクにかなりの部分を売却してしまった。阪急系の「モザイク」の追い出しがうまくいかず、訴訟に発展し、立ち退きまでに多くの時間や費用を要したスタートラインも不運だった。
ピカピカだが「ガラガラ」のこの巨大再開発商業ビルを抱える東急不動産の収益計画も、音を立ててガラガラと崩れるのだろうかと思いきや、2021年11月最上階に「最上級のナイトライフを創造する」をコンセプトに、大型VIPラウンジ&クラブ「RAISE(レイズ)」がオープン。VIPの上のVIP「VVIP」とか、「シャンパンピラミッド」と高いシャンパンボトルを大量に並べる金満さは人気のようだ。
高さ27メートルの銀座の夜景が臨める吹き抜けがこのクラブのウリだが、そのモチーフは伝統工芸「江戸切子」である。とても日本的。
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一方、夜になると真っ暗になってしまうのが日本郵政の麻布台郵便局等を種地とした空前の巨大開発で2023年秋に完成した「麻布台ヒルズである。こちらもテナントは一杯とならず、夜間は未入居の部屋は暗い。「麻布台昼ズ」などと揶揄され、いつまで経っても灯が輝かないため「麻布台夜(ら)ズ」ではないかという悪い冗談も酩酊客からは聞こえる。
高収益を続ける大手デベロッパーだが、その背景にあるのは、異次元の低金利だ。そして、金融緩和の政策を崩そうとしない日本銀行は、今もずっと巨大デベロッパーに寄り添っている。
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