不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』『2030年不動産の未来と最高の選び方・買い方を全部1冊にまとめてみた』(いずれも東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
(著者連絡先)windomaezaki@yahoo.co.jp
不動産デベの大手5社(三井・三菱・住友・東急・野村)の2024年3月期決算が出そろった。不動産市場の活況を受けて、ともに最高益をたたき出した。果たしてこの快進撃は続くか、各社が抱える事情。
山下努2024/05/23
12月決算のヒューリックも2024年12月期は純利益が前期に比べ4%増の980億円で、11期連続の最高益期になっており、社員の福利厚生などは住友不動産を大きく超えていたりする。
とはいえ、不動産業界で「第2の三菱地所」といわれている。
ヒューリックの元を辿れば、旧富士銀行系の銀行資産管理会社の「日本橋興産」という小さい会社だった。富士銀行系には日本を代表する不動産会社の東京建物があるが、そこから見るとはかなり格下だった。
ところが富士銀行が第一勧銀と興銀と合併し、最終的にみずほ銀行となり、富士銀行出身で切れ者の副頭取だった西浦三郎会長(元社長)が企業規模と収益を莫大に飛躍させた。この西浦氏は東条英機の秘書課長と作戦参謀を務めた切れ者の子息で、銀行不動産業界では名の知れた存在だった。
最高益をたたき出したヒューリックだが、売上高が前の期比15%減になっている。それ以前は系列のリート会社との取引を通じた決算対策や、安い仕入れ値で買った土地や物件を数年後に値上がりしたところで売るという手法で決算を作ってきたからだ。
これは「買うばっかり」の住不や優等生の売買に依存する三菱地所ではできない芸当だった。
ところが、日銀総裁の交代で、24年内の再度の利上げも予測される中、「ヒューリックの急進撃も止まるのではないか」と見る向きもある。
不動産業は典型的な借り入れ過剰産業で、金融緩和で借り入れ利子が安くなると笑いが止まらないが、金融引き締めで利子が上がると苦しくなる。もちろん、昔から事業をしている三菱、三井、住友の3社は、過去に貯め込んだ巨額な含み益がある。このために、大株主となった外資が「含み益を吐き出せ」と迫っているのだ。一方、西浦氏の智謀に頼って来たヒューリックには財閥級の含み益はない。
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山下努経済アナリスト
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