元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。
三菱地所は抜いたけれど…住友不動産が追いつけないこと
さて、日銀の超長期にわたる大規模金融緩和で、今では一昔前は4000万円程度で買えたマンションが1億円を突破している。
しかし、そんな過去も知らないで、「低金利でローンの支払いが得だわ」などと言って無理して億ションを買うパワーカップルと若者が増えたようだが、マンションを高騰させた金融緩和を「お得」という世界から抜け出せないこの状況は、大手不動産は笑いが止まらないのではないか。
30年前の日本の土地バブル崩壊は、日銀の公定歩合の急激な引き上げと、不動産・ゼネコン・ノンバンクというバブル3業種への融資規制が原因だった。
その後、デフレが30年続き、不動産業界などは「日銀と大蔵省が日本をダメにした」と言われ続けたため、超長期の大規模な金融緩和が止められなくなった。
とはいえ、わが世の春を謳歌しているように見えるデベロッパーとはいえ、そろそろ厳しくなってきていると思われるのが、財閥系不動産3社の中で約1世紀トップの座を守って来た三菱地所である。
24年3月期の決算で経常利益、最終利益で住友不動産が三菱地所を追い抜いたが、これが定着、万年3位に定着するのではといわれている。
というのも、三菱地所は、この20年、三井不動産と業績を争うため、優良不動産を売って利益をかさ上げしてきた。
一方、愚直な住友不動産は買い一辺倒で、基本的に買った不動産は、分譲住宅以外は売れなかった。それがアベノミクスやアベクロミクスが味方したのだ。
超絶的な金融緩和で住友不動産の買った土地は右肩上がりに上がったが、借入金の利子はマイナス金利とゼロ金利が効いて鼻くそ程度だった。
もちろん、三菱地所の保有資産も値上がりしたが、毎年のように切り売りしたため、アベクロミクスの果実は圧倒的に住友不動産に味方したのだ。
ただ、学生の就職人気は三菱地所と三井不動産がダントツで、両者は東大の本郷や柏のキャンパスでの研究資金の供与などを競い合っている。今のところ住友不動産はお呼びでないようだ。