【デベ考察①】築地再開発も決まってイケイケ三井不動産と、横浜で巻き返し狙う三菱地所

株価と並んで上昇を続ける日本の不動産。これを背景に三井不動産は築地再開発、外苑再開発やららぽーとなどの商業施設も好調だ。一方、三菱地所は「大・丸・有」にこもりきりでふるわない。そんな大手2社の現状とこれからを考察。

山下努2024/04/22

三菱地所の牙城「大・丸・有」

パッとしない三菱地所

三井不動産が空前の業績を上げるなか、昔は三井に比べたら雲の上の存在の圧倒的な存在だった三菱地所の凋落は著しい。

やはり、東京駅周辺の払い下げ地の大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町)の日本の超一等ビジネス街に頼っていたツケが出てきたことが要因のようだ。

数十年前、三井不動産が東京湾埋め立てでのし上がるころ、危機感を持った三菱地所も大丸有の変革の絵を描いていた。
ただ、実行に移すのが遅かった。
三井不動産は野武士集団だが、さしずめ三菱地所は御公家さんだ。大丸有を出て成功したつもりが失敗したこともある。それが横浜市の西区における「みなとみらい」(MM)の街づくりだ。

横浜のMM、ランドマークタワーは減損

三菱地所が気前よくMMに日本一の高さを誇る横浜ランドタワーが完成したのは1993年7月のこと。バブル崩壊後とはいえまだまだバブルの余韻が残る時期だった。
その高さから最上階の客室やレストランの下に雲が湧き、雨が降る。バブル後の金満カップルは、「下界の人間には雨が吹き付けているが、僕たちにはお日様が注ぎ込んでいるね」とホテルの1室で語り合った男女も少なくないという。
こんな素晴らしい環境を用意した三菱地所だが、採算面では甘く、結局は減損会計を強いられた。

横浜・みなとみらい21

さらに横浜市に食い込んでいた三菱地所だが、日本の開国を担った横浜市中区の関内地区の再開発は、ライバルの三井不動産にいいとこ取りされ、悪いことに財閥系不動産3番手の住友不動産まで関内再開発に食い込んできた。

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この記事を書いた人

山下努

山下努経済アナリスト

元朝日新聞経済記者、英字新聞「ヘラルド・トリビューン朝日」記者。不動産など資本市場の分析と世代会計、文化財保護に高い関心持ち、執筆活動を行っている。『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)などペンネーム・共著含め著書多数。

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