高齢者の孤独死も防ぐ 空き家をシェアハウスで利活用

高齢化社会が進み、単身高齢者が賃貸住宅の入居を断られるケースが増えている。その一方で増える空き家。この2つの問題を一挙に解決しようというのが高齢者向けシェアハウスだ。しかも、空き家のオーナーにもメリットがあるという。そんな空き家利活用の方法とはどういうものなのか。

Gold beans.編集部2024/03/12

空き家オーナー、高齢者、自治体…三方よし

とはいえ、単に空き家と高齢者をマッチングさせただけでは問題解決とはならない。
そこで思いついたのが空き家をシェアハウスとして利用することだった。
「最初のマッチングは高齢の女性に絞りました。やはり女性のほうが長生きですし、旦那さんが先になくなってしまい一人になってしまう。こうした女性は初めて家族と離れた一人暮らしをするという人も多い。しかし、シェハウスであれば、家族といっしょのような暮らしになります。女性はおしゃべりが好きですから、シェアハウスであれば、楽しくみなさん集まっていられます」
と笑う持田さん。しかし、単に高齢者と空き家のマッチングだけでなく、生涯現役ハウスにはもう1つ空き家のオーナーにとってもメリットを生み出している。

江戸川区内第一号シェアハウス

「江戸川区と東京都には空き家に対する助成制度があって、いまあるシェアハウスは100万円の助成を受けています。足りない分は社団で基金をつくり、これで初期投資にして、費用をまかないました。そのうえで社団を居住支援法人にして、空き家のオーナーさんから居住支援法人が物件を借り受け、実際に住まわれる人の貸し出すサブリースというかたちにしました。空き家のオーナーさんに対しては、3年間初期費用を賃料からいただき償却するというかたちにしました。つまり、空き家のオーナーさんにとっては、自己負担ゼロで今までの空き家が、社会的に役に立つものになり、居住支援法人がサブリースすることで、賃料が滞る心配もなく貸し出すことができるようになりました。しかも、シェアハウスですから孤独死の心配もありません。」

空き家を抱えたオーナー、住むところで悩む高齢者、空き家問題を抱えた自治体と三方よしなったわけである。
こうした江戸川区の成功例を受けて、台東、墨田、江東、葛飾の城東4区でも、生涯現役ハウスの方法を導入する動きが出ている。また、江東区、横浜市には生涯現役ハウスの支部も開設されている。

しかし、この三方がみんなすべて同じ方向を向いているかというとそれぞれの立場で考え方が違う。

「窓口でいらっしゃる相談者の6~7割は高齢者の方です。しかし、こうした高齢者の住居問題についていっしょに考えてくれるかというと、そうはなっていません。空き家のオーナーさんは自分の持つ物件の価値、不動産会社は新築物件やリノベしたマンションなど利益のとれる物件に目が行きます」
不動産、賃貸物件のやり取りは、入居者と物件オーナー、あるいは不動産会社というワンウエイの関係でやりとされる。しかし、持田さんのような居住支援法人が入り、第三者的な相談を受けることで、それぞれの利害の調整をすることでスムーズなやり取りが可能になるという。
現在、生涯現役ハウスが運営しているシェアハウスは1軒だけだが、今年には3軒ほどに増やす準備を進めている。

えどがわDEPOT:https://sghouse.org/

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